究極超人あ~る

「やあ」


「やあ」


「あ~ると言ったらやっぱりこの挨拶だよね」


「原作が終わってもう30年近く経つと言う事実」


「あああ~」


「時代を感じさせつつ時代を感じさせない作品だよね」


「どっちだよ…。って言うか当時から知っているから時代を感じないじゃないの?」


「ああ、きっとそうだ。今の若者が読んだら絶対古臭い漫画って思うだろうね」


「作風的に古くはないと思うよ。ゆうき先生も現役の漫画家だし」


「題材は思いっきり当時のネタばかりでコーティングされてるけどね」


「馬鹿猫はこれ、中身知らずにタイトルのインパクトだけで単行本買ったんだよね?」


「そうそう、そう言う買い方したのは後にも先にもあ~るだけ…じゃなかった。この後に宇宙おてつだいやよいさんって作品も中身知らずに買ってたわ」


「やよいさんもいい作品だったね」


「話を戻して。あ~るは何がいいかって言うと文化部漫画って所が大きいかな。キャラがみんなゆるいの。ああ言う部活に憧れたなぁ」


「リアル高校時代に馬鹿猫が入部していた文芸愛好会って結構それに近かったんじゃ…」


「確かにゆるかったよ。愛好会だから顧問もいていないようなものだったし部活動と言えば視聴覚室でアニメ見て季刊同人誌を作る事くらいだったし」


「何それ天国じゃん」


「当時の三年生が作った部活だったから彼らが卒業した後はぱっとしなくてねぇ。って、私のリアル高校生活の話はいいの!話をあ~るに戻して!」


「あ~ると言えば鳥坂先輩!むぁ~かせてっ!」


「個性的な登場人物も面白かったね。成原博士とか」


「日常系なんて言葉がない時代に日常系を描いていたよね」


「学校の行事は踏襲するし、しっかり進級もする。ある意味リアルな作品でした」


「文化部漫画で他校と争う要素はなかったけどしょっちゅう何かと戦ってたね」


「文化祭に生徒会長戦に部室争奪に運動会に新入部員争奪戦に修学旅行の写真を担当する戦いに乗っ取られた学校を取り戻す戦いに…こう書くと結構戦ってる」


「で、大抵は何となく勝利する感じ。負けたりもするけど」


「あ~るを語ろうとするとやっぱり当時の時事ネタの豊富さは外せないね。時事ネタを絡ませるギャグ漫画と言うと今だと銀魂が有名だけどあ~るのギャグセンスもすごかった」


「当時のCMネタからアニメ、特撮、漫画、そりゃもう色んなネタでひしめき合ってたねぇ」


「当時を知る資料としての価値も高いよね」


「いや本当オタクのバイブルですよ」


「今は分からないけど当時のヲタはみんなネタ知ってたよね」


「ところで、あ~るで一番好きな話ってある?」


「どのエピソードも面白いんだけど強いて一番を上げるなら一番好きなのは5巻の『真夏の一日』かな」


「何故その話を?」


「全く何も起こらない一日の話だから。そう言う内容でしっかり面白いんだからあ~るはすごい」


「キャラクターの勝利だねえ」


「本当、この作品は面白いので当時のネタが分からなくても笑えるので是非読んで欲しいです」


「あ~るから生まれたネタも多いから元ネタを知るチャンスになるかも」


 えー、と言う訳でですね、今回のネタは究極超人あ~るですはい。実は私はこの作品が連載中の頃はサンデーを読んでいなかったんですよ。原作が完結して全9巻の単行本が書店に並んでいてその時にタイトルを見て面白そうだったのでそれで買い集めたのが知ったきっかけなんです。CDのジャケ買いみたいなものですね。


 私の面白そうセンサーは正しくて単行本を読みながらゲラゲラ笑ったのを昨日の事のように覚えています。もうあれから30年近くも経つのか…(遠い目)。


 作者はゆうきまさみ先生。当時はアニパロの名手と言う印象の強い作家さんでした。主人公はアンドロイドのRあ~る・田中一郎。彼の出生のエピソードがまんま鉄腕アトムのパロディなんですよね。本当にこの作品はパロディがてんこ盛りでした。しかも分り易い浅いのから関係者しか知らないような深いものまで。作品のネタ解説サイトなんてありますからそれらを読むとどれだけネタを詰め込んでいたのかがよく分かると思います。


 基本的に作風はゆるくて間抜け。色んな出来事が起こるもののいつの間にか何とかなっている事が多い感じです。文化部漫画ならではの熱血とは別ベクトルの展開が楽しいです。頑張る事は頑張るけど無理をしないスタンスと言うか。最終巻には出てくるけど顧問がいないも同然で生徒達で自主的に学校生活を楽しむところとか。


 こんな部活に入りたかったアンケートでもすぐに名前が上がる光画部ですけど部活どころか学校自体、こんな学校に入りたかったと言う理想の学校なんですよ、舞台になった春風高校って。校長先生も人がいいですしね。話も短いし。スポーツで頑張ろうって人には全く向いてない学校だけど。


 作風ののんびりした雰囲気は日常系の漫画の走りなのかなって気がします。そりゃ今の日常系の作品みたいにただダラダラ進むだけじゃなくて色んなイベントがてんこ盛りなんですけど、基本的にみんな飄々としているんですよね。とんでもない事が起こってもすぐに受け入れられる度量の深さがあるって言うか。特に鳥坂先輩が本気を出した時の安心感はすごい。


 30年近く前の作品ですから今じゃ古典と言ってもいい作品ですけど、面白さは風化していませんから読む機会があれば是非読んで欲しいと思います。分からない時事ネタもきっと雰囲気で読めちゃうと思いますよ。

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