9 燃

 一時的に身体を冷ました二人だが、愛撫を再開すると井芹さんの身体が弓なりに反る。

 ぼくのペニスも程好い硬さになっている。

 井芹さんの愛液の量も十分で、いよいよぼくと井芹さんが一つになる準備が整う。

 ……とはいえ互いに初めての相手なのでそれぞれの性器の位置を確認しながらの作業となる。

 井芹さんの脚を一八〇度開脚させ、ぼくが膝立ちで秘所を確認しつつ挿入するなら必要ないが、布団の中では手探りだ。

 だがそれぞれの手の導きもあり、程無くぼくの性器が井芹さんの性器の手前に到着する。  

 ついで、にゅるっという感じで中に入る。

 井芹さんの腰の部分に枕を宛がえば良かったとそのとき気づくが、もう遅い。

 そのまま、ぼくが全身する。

「ああ、はあ、あああ」

 と井芹さんが小さく喘ぐ。

 ぼくも喘ぐほどではないが、呼吸を乱す。

 ついで腹と腰に力を入れ、ゆっくりとピストン運動を開始する。

 お互いセックスの経験者なので抜き差しのタイミングはわかるはずだが、最初はやはりそれがずれる。

 けれどもだんだんとタイミングが合ってきて、「ああ、はあ、あああ」という喘ぎ声と完全に重なる。

 井芹さんの身体の反り具合から、ぼくは井芹さんの快楽度を知る。

 井芹さんの胸と首筋を舌で味わいなから、手でも乳首も揉み続ける。

 それから少し腰を浮かして何とかクリトリスまで指を移動し、軽く弾く。

 すると――

「えっ、うそっ」

 と小さく叫んで井芹さんが波に飲まれる。

 大きさはそれほどでもなかったようだが、オーガズムだ。

 井芹さんの骨盤周りの筋肉がリズミカルに痙攣する。

 さらに全身の骨格筋が収縮し、鼓動と呼吸が荒くなる。

 ……と同時に井芹さんの身体全体が大きく反り返り、それからゆっくりと弛緩していく。

 やがて全身が夢から醒めるように落ち着きを取り戻す。

「ふう、嘘みたい。もう逝っちゃったなんて」

「おつかれでーす。でもまだ逝けるでしょ」

「宮野さんはいいの」

「さっき井芹さんが出してくれた効果かな」

「良かった。結局得をしたのは、わたしだったのね」

「それはまだわからないよ」

「一回出したい」

「いや、このままでいい」

 ついで、井芹さんの第二ラウンド/ぼくの第一ラウンド後半が始まる。

「後ろからしていい」

「恥ずかしいな。でもいいよ」

 井芹さんの許しが出たので、ぼくが井芹さんをひっくり返す。

 ついで膝立ちになり、井芹さんの秘所の位置を確かめながらゆっくりと挿入。

「ああ、うん、ああ」

 と井芹さんが喘ぐ。

 ぼくも少し喘ぎながらピストン運動を開始する。

 ピストンだけでなく蠕動もする。

 だが気をつけないと、それだけで逝ってしまいそうだ。

 数回ピストン及び蠕動運動を繰り返すと、ぼくの性器が井芹さんの秘所からプルンと抜ける。

 暴れて揺れる自分の性器を宥めながら再び井芹さんの秘所に入れる。

 それから、ぼくが腰を振るたびに井芹さんが「あん、あん、ああん」と啼く。

 その声はまだ小さいが、先ほどよりは大きいだろう。

 それでしばらくするとまたプルンとぼくの性器が井芹さんから抜ける。

 だからぼくは大きな動きのピストン運動を止め、互いの皮膚を擦り合わせるような形に変える。

 快感は少し減ったが、その前に十分味わっている。

 井芹さんのクリトリスを探すのに、ぼくの手が慣れずに少し手間取る。

「あん、あん、ああん」

 と井芹さんは変わらず繰り返すが、先ほどのような快感はないようだ。

 そこで、ぼくが井芹さんのクリトリスを優しく攻める。

 けれどもこのラーゲは井芹さんとぼくには合わないようだ。

 上手に運べば、こちらの方が互いに大きな快感を引き出せると思うのだが……。

 それでまた正常位に戻り、ぼくが井芹さんの上で上下する。

 井芹さんが両脚を浮かせ、足先をぼくの膝の裏に置く。

 そうなると互いの身体の密着度が高くなり、ぼくの手を井芹さんのクリトリスに近づけることが難しい。

 だから、ぼくは性器根元付近の下腹部で井芹さんのクリトリスに刺激を与える。

 手で触るより間接的だが、井芹さんのクリトリスが十分に膨らんでいれば上手く行く。

 そうやってしばらくすると井芹さんの「ああ、うん、ああ」が「はあ、ああ、はああ」に変わる。

 ぼくの限界も近づいている。

 頭の隅でぼくは思う。

 一緒に逝ければ最高だが、それが難しいこともまた事実だと。

 けれども、ぼくと井芹さんならそれができる。

 絶対にできると強く念じて腰を振る。

 するとその数秒後、ぼくの限界が訪れる。

 頭の中が真っ白になり、脊髄を快感が走り抜け、……と同時に井芹さんの身体が一段と大きく反り返り、

「はあああああ」

「ああああああ」

 二人同時に小さく叫んで終局を迎える。

 ぼくの心臓が破裂しそうなほどドキドキする。

 井芹さんの心臓もまったく同じ状態だ。

 夥しい量の白い迸りが次から次へとぼくの中から物凄いスピードで溢れ出し、井芹さんがぼくの性器に巻き付けてくれたコンドームの先端に溜まっていく。

 ついで、ぼくの身体が井芹さんの上にどうと沈む。

 ぼくと井芹さんが同時に「ふう」と声を出す。

 今ホテルの廊下を歩く誰かがいれば、ぼくたち二人の行為は筒抜けだろう。

 あるいは隣の部屋の宿泊客に……。

「他のお客さんから苦情が来なければ良いけどね」

「どうして同じことを考えてるわけ」

 そんなことを互いに言い、顔を見合わせて自然と微笑む。

 ついで、「重いわ」と井芹さんが指摘し、ぼくが退く。

 それから井芹さんの横に身体を並べ、井芹さんを感じながら一緒に天井を見上げる。

 そのまましばらく無言だったが、

「先にシャワーを浴びてきていいわよ」

 と井芹さんが落ち着いた低い声でぼくに言う。

 だからぼくはゆうるりと身を起こし、バスルームに向かう。

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