7 展

「恥ずかしいな。きれいに見えてる」

「可愛いよ」

「ありがとう」

「ぼくの方こそ」

「戻るなら今よ」

「そんな気はないくせに」

「じゃあ、もう戻れないわよ」

 それで井芹さんにキスをする。

 最初は唇に軽く触れただけだ。

 だから、すぐに離す。

「キスは上手いの」

「全然」

「じゃあ、もう一回」

 それで今度は深く触れ合う。

 舌を伸ばして互いの口中を探り合う。

 上の歯を探り、下の歯を探り、互いに舌を絡ませてから、また他の部分を探り合う。

 至福の時の訪れだ。

 同時に手でも互いの身体を探り合う。

 柔らかいところ、硬いところ、その他のところと忙しなく。

 それから一時離れると、

「コンドームはあるの」

 と井芹さんが問う。

「さすがにないな」

「じゃあ、買いに行かないと」

 それで二人して部屋を出る。

 さすがに薬店は閉まっていたのでコンビニを探し、見つけ、入る。

 店内を巡り、商品とフェイスタオルなどを籠に入れ、レジに向かうと若い店員に不審な目で睨まれる。

 たぶん井芹さんの顔が幼かったせいだ。

「だけど、いくらなんでも未成年には見えないでしょ」

 とコンビニを出ると井芹さんが怒る。

 怒った顔もまた可愛い。

「若く見られたんだからいいじゃない」

 ぼくが指摘すると、

「いいえ、単に子供に見られたのよ」

 と、もう一度怒ってから破顔する。

 それから手を繋いでホテルに戻り、エレベーターに乗って降り、廊下を部屋に向かいながら、そういえば東急インはビジネスホテルだったな、と思い出す。

「井芹さん、声は出す方」

「良かったわね、静かなタイプよ。で、宮野さんは……」

「ぼくも静かなタイプ。ついでに白状すれば強くない」

「誰も宮野さんにそんなことを期待しないわ」

「それなら一安心。井芹さん、シャワーは」

「浴びるわよ。一緒に浴びたい」

「狭いだろう」

「大丈夫よ」

「では、お供しますか」

 しかしバスルームが狭かったのは違えようのない事実。

 だから当然、二人同時にシャワーを浴びることはできない。

 井芹さんが先に使う間、つくづくとぼくが井芹さんの裸体を鑑賞する。

 ついで、ぼくの番が来ると、

「大事なところを洗ってあげましょうか」

 と井芹さんが誘いかける。

「そんなことをされたら、ここで出ちゃうよ」

「それもまた一興」

「井芹さんてSなわけ」

「どちらかといえばMかな。行為のときは」

「そうなんだ」

「やればSもできるけどね」

「遠慮しとくよ」

「宮野さんペニス、半勃ちね。わたしに失礼だわ」

「それでもMかよ」

「ふふふ。でも、ああ、勃ってきた。触っていい」

「どうぞ」

「ふうん、思ったより細いのね」

「もう少しだけ太くなりますよ」

「あら、傷ついた」

「いいえ」

「じゃ、こちょこちょこちょ」

「だからさ、そんなことをしたら出ちゃうって」

「先に一回出すなら、ここの方がいいかなと思ってね」

「それはそうだけど」

「口がいい」

「それは後でして貰うつもり」

「わかった。じゃあ、ボディーソープをいっぱい付けてと」

 井芹さんの大きくはない手が、強く弱く、ぼくの性器を一心に扱く。

 だが勝手が違うのか、すぐに絶頂に達しない。

「なんだ、宮野さん、ちゃんと持つじゃない。これなら、ここでしなくても良かったかも」

 しかし井芹さんに言われてすぐ、絶頂が近づく。

「あああ」

「うん。いい顔よ」

 そしてぼくの精液がバスルームの壁に弾け飛ぶる。

 井芹さんが自分の身体にかかることを拒んだからだ。

「せっかく洗ったからね」

「いいよ、説明しなくても」

「後始末は宮野さんに任せたからね。でも、これで終わりってことはないよね」

「勃つまでに少し時間がかかるよ」

「若いのに、まあ、なんてことでしょう」

 ケロリとそう言い、井芹さんがバスルームを去る。

 もちろんその前に両手をもう一度洗ってから……。

 経験のある人なら誰でもわかるが、一度精液の出た男の性器をボディーソープで洗うのはヘンな気分だ。

 それに精液がソープ成分と微妙に喧嘩をするので気持ちが悪い。

 もっとも、それも濃度が濃い間の話だが……。

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