第718話 第2章 6-2 雷紋黒曜共鳴剣
「いま、マレッティとマラカ、そしてディスケル=スタルのガリア遣いが、一つでも二つでもガリア封じの波動を出すなんとやらを潰しに動いてる……きっと、彼女たちならうまくやるよ。そうすれば、カンナさんのガリアなら復活すると思うんだ」
確かに。しかし、
「ガリアを封じられてて、どうやってそのガリア封じのナントカをつぶすんだろ? そいつ、バグルスの一種なんでしょお?」
「そりゃ、知らないけど……バグルス専門の学者がいっしょにいるみたいだ。その人が何とかするんだろ」
なんにせよ、うまくやってもらうしかない。現状、忍者だのバグルスだのに襲われてはひとたまりもない。
やがて、尾根に出ることにはすっかり夜が明けた。高いところから見渡すと、巨大な湖とこの聖地の島の絶景が目に映える。朝日が
「きれいねえ」
スティッキィもため息をついた。
しばしその絶景を眺め、息を整える。
と……。
三人とも、気が付いた。心へかかっている重石のようなものが外れるのを。
試しにカンナが右手を振る。
ビジュゥアア!
生き物みたいに蠢くプラズマと共に、黒い半透明の剣が出現する。
「……!」
二人も右手を振る。しかし、二人はガリアが出なかった。
「なんで!?」
スティッキィが癇癪を起こし、手がもげるのではないかというほど振り続けたが、何もでない。
「どおおなってんのよおおおおおお!?」
狂気的な眼で唾を飛ばしつけ、スティッキィが喚いたが、
「おちつきなよ。こうだ。ひと呼吸おいて」
ちょっと勿体ぶったようにしてライバが手を振るや、その手に鈍色の大型食肉解体ナイフが現れる。
「あたしだけえ!?」
「出す前に、心の中でガリアを感じなよ。出て当然と思うんじゃなくてさ」
云われ、深呼吸し、落ち着いてからスティッキィが右手を振ると、そこにはまるで木炭のような艶消しの漆黒に佇む、スティッキィのガリア
「でたあ」
子供のような笑顔で云い、そして純粋な殺気に引きしまる。
「露払いはまかせてもらうわ」
「……マレッティたちが、やってくれたんだね」
どこか分からないが、間違いなくこの島のどこかで同時作戦を行っている同志たちを思い、ライバとカンナがしばし感慨に浸る。
「これくらいやってとおぜんよお!! いや、まだまだやってもらわないと!」
「わ、わかったから……」
眼をむいていきりたつスティッキィをなだめ、ライバ、
「カンナさん、数回の瞬間移動をお許しください。途中の待ち伏せなんか、全部ぶっとばしますから」
「……うん!」
ライバがナイフを逆手へ持ち替え、二人の腰のあたりを抱えるようにして二人の間に入るや、一気に尾根道を瞬間移動で飛ばした。一回に役五百キュルト、すなわち五十メートル弱を瞬間移動できる。距離が短いのは、本来は移動用の能力ではなく、戦闘用の力だからである。近接戦闘中に、一瞬にして距離と場所を変え、敵を幻惑する力を連続して行い、長距離移動に応用しているだけだ。
ライバ自身は何千回……いや、何万回も連続して行えるのでルット単位で移動できるが、カンナは十回も移動されると「酔って」しまう。大切な戦闘の前にそれでは本末転倒なので、移動距離は制限される。しかし、そもそも島の先端まで一ルットも無い。半分でも迎撃のために待ち伏せるバグルスどもをすっ飛ばせるのなら、カンナの力の温存に役立つだろう。そう思った。
のだが。
バアン!
四回目の移動で、三人が見えない壁に跳ね返され、地面へ尻もちをついた。
カンナとスティッキィは訳が分からず、眼をまわす。
ライバがすかさず立ち上がってその見えない壁へ手をついた。何もないようで、ガリアを遣うと確かに障壁があった。
「なあによお? ガリアが遣えるのは、ここまでってことお?」
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