第499話 第3章 4-3 死の再生者
これぞガラネルの力の一端であり、生と死を交錯する。死んだバグルス達は、
「そ、そんなことができるのか……!」
さすがのパオン=ミも、愕然として眼前の暗がりに浮かぶ死体……いや、亡霊……いや、何なのかわからないものを凝視した。
「この子たちは、眠らないわよ。残念ね」
一瞬、雲が流れ、月光が復活したが、キリペが力を発動させる前にまた隠れる。
ガラネル、さらに照明弾を三つ、を打ち上げる。激しく発光しながらゆらゆらと落ちてくる光の塊に、一同の影が不気味に伸びた。
もたもたしていては、残った三人のバグルスも合流し、さらにガリア封じの力が強められるおそれもある。
「散会せよ! こやつらのガリア封じには指向性がある! 後ろへ回れ!」
弾かれたように、カンナとスティッキィが動いた。
「させないんだから!」
銃声が響き渡る。幸い、死の国より戻ってきたギロアとブーランジュウの動きは、異様なまでに遅い。ガラネルにとっても、残った三人のガリア封じの陣を使うバグルス達が合流するまでの時間稼ぎだ。
「回りこめ!」
ギロアやブーランジュウの前面より外れるとガリアが復活する。火炎符、
それはすぐに分かった。
村中の家々から、ユホ族の人々が飛び出てくる。その数、百以上。しかし……みな肉体に大きな傷があり、血にまみれていた!
死体だ!
死体が動いている!
ガラネルが……既にバグルスや竜で村人を襲って殺していた!!
「こ、こんなこと……!!」
スティッキィが衝撃のあまり、足が止まってしまった。
動く死体の怪物が、いっせいにスティッキィへ群がる。
「う、うわっ……いやっ……いやあっ……!!」
竜も恐れぬ歴戦の暗殺者が、子供のように怯え、恐怖のあまりガリアも消えてしまう。死んでいる人間が、動いて襲ってくる。それほどの異様さだった。
しかし、ウガマール秘神官の資格を持つカンナにあっては、こんな子供だまし、何程も無い。
「死は河へ、死体は土へ帰れ!!」
ウガマール古代文字による呪文を唱え、高々と黒剣を掲げるや、ドガラガガッ……!! つんざく雷鳴! 閃光がほとばしり、稲妻が村人の死体を打ち据えた。爆発がおき、いっせいに死体達がひっくり返る。スティッキィとパオン=ミが驚いてカンナを見つめた。
「なんですって……!」
自らの力が一撃で打ち破られ、ガラネルが驚愕と歓喜に打ち震えた。
「す、すごい、素晴らしい力よ、カンナ! さあ、あたしといっしょに来なさい! あたしには、あなたが必要なの!」
「なんで……!」
暗がりに眼鏡を自らの反射光で光らせながら、カンナが黒剣を構えなおす。バチバチと電光が弾け、極低音が動くユホ村住民の死体たちと共鳴して打倒してゆく。その耳障りな波動に、ガラネルも脂汗が額を伝った。吐き気、めまい、そして激しい動悸、なにより割れんばかりの頭痛がする。
なんと、この波動は一時的によみがえった死者のはずのギロアとブーランジュウへもダメージを与え、動きが弱まったブーランジュウへパオン=ミの火炎弾が炸裂し、爆音と炎がふきあってブーランジュウを打ち倒した。
だが、滅ぼすまでには至らない。やはり、効果が薄い。煙の中から現れたブーランジュウより、ブワッと眼に見えないガリア封じの力が飛び散り、呪符が端から砕かれる。
「厄介な……!」
パオン=ミが奥歯をかんだ。
さらに、ガラネルがカンナへ向けて銃撃。弾丸はプラズマの触手に捕らえられ、どこかへ弾かれた。が、その隙にガラネルがまたも地面を撃つ。すると、もう一人、地面の下より現れる。カンナは記憶がないが、それはスーナー村でカンナに倒された三人目の高完成度バグルス・ミヨンであった。それが目を光らせ、恨み骨髄というより虚無に支配された顔が引きつったまま、牙の並ぶ大口を開け、大きな爪のついた両手を振りかざしてカンナへ迫る。もちろん、角からはガリア封じの波動が噴き出る。
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