第324話 第1章 4-3 シードリィの力
「まだまだ、勉強しなくちゃ!」
「勉強だと?」
「そうよ……」
カンナの瞳が、バチバチと電光で輝きだした。
「このわけの分からない力を……ちゃんと自分で自分のために……いや、他の人のために遣いこなせるための勉強!」
ガリア「
シードリィの黄色い瞳が、肩や脛の線が、さらに強く発光する。
「うううあァ!」
シードリィが唸り声を上げ、カンナへ飛び掛かると思いきや、身を低くしてその右手を雪につっこんだ。とたん、雪が沸騰し、爆発して水蒸気となり、さらにそれがカンナへ向けてすごい速度で走る!
「!?」
硬直したカンナ、無我夢中で身体を動かし、高温蒸気から逃れる。雪面へ転がったが、その上へ沸騰した熱水が降り注いだ。
「…アッチ!!」
飛び散った湯が、カンナを怯ませた。何が起こっているのか皆目分からない。
そこへ上空から爪を立てて吹雪飛竜が襲ってきた。
「……こんちくしょうめ!」
黒剣を振り回す。グワッ! グァララア……ッ! 共鳴し、振動が竜を襲って、翼ごと胴体もひしゃげ、純白の飛竜は血を吐き、錐揉みして雪面へ転がった。
そこへ雪原竜が突進してくる。カンナは共鳴をそちらへ向け、稲妻を浴びせようとした。
が、ブウウウウと妙な音がして、カンナは自分の共鳴にこんな音があったか? と、一瞬戸惑ったが、それは自分の音ではないことに気がついた。そして、体中が異様に熱くなってきた。身体の外からではない。身体の中から熱が吹き上がってくる。
カンナは肉体の内部より煮え立って爆発した、あのフルトを思い出した。
も し や!!
シードリィが、その右手をカンナへ向け、何か目に見えないものを飛ばしているような、とにかく、何かの術をカンナへ向けて仕掛けていた。
「……うう!」
カンナは歯ぎしりして、脱兎のごとく逃げた。すかさずシードリィも距離を詰める。つかず離れずカンナへ向けて右手より「力」を放つ。熱い。暑いではなく熱い! 全身の血液が煮え立ってくるのが分かる。まずい!!
「こおおいつうう!!」
目を剥いて、カンナは反撃に出た。この力は、逃げているだけでは殺される!
共鳴をシードリィへ向ける。強烈な音響を飛ばしつけるも、高熱でぼおっとして、音圧がシードリィの手前でその足元をえぐった。爆発音がして、さしものシードリィもひるんで下がる。すると、カンナの熱も若干下がったように感じられた。届く距離が、あまり無いとみえる。
しかし竜たちはカンナへ休みを与えない。
巨大な雪と氷の塊めいた雪原竜が二頭、雪煙を上げてカンナへ突進する。サラティスの大猪竜を思わせる圧力だ。
「うあああ!」
カンナの眼が蛍光翡翠に輝く。大きな球電が現れ、唸りを上げて一頭の竜へ食いこみ、大爆発した。横腹から上半身にかけて爆裂し、雪に血潮をぶちまけて倒れる。続けざま、もう一頭がカンナを押しつぶさんと突進をかける。
「わああ!」
返す剣でさらに球電発射! 真っ向からぶつかって爆発、竜が煙を吹いて横倒しになった。そのまま長い毛が燃え、足掻いていたがやがて動かなくなる。
さらに、一頭の凶氷竜が走りこみざまに青い毒液を吐きつけてきた。だがカンナ、凶悪的な雷撃を放つ。毒液が瞬時に蒸発し、巨大な七面鳥めいて、凶氷竜は黒こげになって衝撃に弾き飛ばされ、感電して転がった。
空気が帯電し、ジリジリと周囲にエネルギーの輻射が漂う。その間にシードリィが距離を詰め、カンナへ向けてまたその特殊な力を放った。
が、カンナとの間の空気に漂う電離した粒子が、バチバチと破裂してその力を遮った。
「なんだ……!?」
シードリィの黄色く細い眼が驚きに見開かれる。
バグルスやカンナ達に、我々のような科学的概念があるわけではない。しかし、ガリアを封じるという、どちらかといえば超能力的で防衛的な「力」をガラネルより与えられていたギロアやブーランジュウと異なり、このホルポス配下の高完成度バグルスは、攻撃的な分子振動の「力」を与えられている。分子が激しく振動して熱を発し、相手を焼き殺す。水分が多い場合は、沸騰させて煮殺す。そして終いにはバラバラの粉々にするか、グジャグジャに融解爆裂させてしまう。
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