第275話 助太刀
破壊された空間が自然に修復されてきたので、ダンティーナはその暗黒の場所からスターラの街並へ戻った。まだ怯えているルバータへ、安心しろという意味をこめて親指を立てて見せたが、様子がおかしい。ダンティーナ、ルバータの視線の先へ目をやって、口を開けた。
ライバだ。
どうやって、あの攻撃から逃れたのか? そしてどうやって、あんな位置まで一瞬で?
答えの半分はわかった。ライバの手には、大きな食肉解体用のナイフが握られている。ガリアだ。きっとあのガリア遣いが、何かしらの『力』でカンナを助けたのだ!
その瞬間、ライバが消えた。眼の錯覚かと思ったダンティーナ、すぐに周囲を見渡す。そして、ルバータの真後ろに立っているライバを発見したときには、もう、その大型のナイフがルバータの首の後ろへ叩きつけられて、血を吹き出してルバータが地面へ倒れ、ガクガクと
痙攣はすぐに止まった。石畳を大量の鮮血が血溜まりとなって赤く染め上げる。ルバータが死に、音が戻る。
「……てめえ、スターラ人か!? そいつに、てめえみてえな仲間がいるなんて、聞いてねえぞ……!」
ダンティーナが眼を吊り上げる。ライバは肩をすくめ、にやっと笑ったまま、
「仲間っていうか、たまたま知り合いでね……通り掛かったら、なにやらガリア遣いに襲われてるじゃないか……あんたが、ウワサの暗殺者さんかい? どうしてカンナさんを狙ってるのか知らないけど……助太刀させてもらうよ」
これは嘘だった。この竜を倒すというより暗殺に最適なガリアを観ても分かる通り、ライバもメストの一員である。彼女はレブラッシュの配下で、バーケン配下のダンティーナとは初顔合わせだった。ただ、レブラッシュの指令で、カンナを見張っていた。危なくなったら、正体を隠して助けろ、という指令を受けて。
「だけど、あんたを倒すのはあたいじゃないよ。このカンナさんだ」
「ちょっとちょっと~、なに云ってんの」
笑うダンティーナだが、先程の稲妻の衝撃をまだ身体が覚えている。とてもではないが、まともにやりあって勝てる相手ではない。
ここは逃げだった。
「そいつが使い物になるかどうか、見りゃあわかるってもんだよ。それにあんたの、そんな大型ナイフみたいなガリアで、この
「つよがっちゃってえ」
ライバがわざとらしく口に手を当ててさも楽しげにほくそ笑んだ。ダンティーナ、心情と作戦を全て見抜かれている気分となり、内実、冷や汗だった。
「ううおおお!!」
気合を入れ、ガリアを発動! ライバとカンナを攻撃すると見せかけて、一気に空間を破壊してその中に逃げこむ。
「カンナさん、逃げますよ!」
ライバが叫ぶも、カンナはまだ座ったままだった。
ライバは、カンナが自分の瞬間移動に酔ってしまうのを思い出し、しょうがないか、と思った。別に、あの名前も知らないメストを倒すのが任務ではない。
が、カンナ、やおら起き上がった。
「……逃ィがさなあああいいい!!」
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