第262話 マレッティ襲撃さる
そこは、商業区と工業区の合間にある歓楽街の片隅で、民営遊郭や場末の安売春窟の並ぶ通りであった。
マレッティは実家が破産してより、ここで十三から三年のあいだ客を取り続け、債務の返済にあてていた。
その記憶が一気に蘇って、猛烈な吐き気と眩暈、頭痛に襲われた。どっと汗が出る。
この午後も早い時間、ましてこの季節、通りは閑散として店も閉まり、誰もいない。そこにマレッティが路地から抜けてきて、石化したかのごとく固まった。
風でフードがまくれ、顔があらわになり金髪がたなびいた。その顔は、アーリーもカンナも、誰も見たことがないほどに嫌悪と憎悪で歪み、眼が病的に見開かれ、皺が刻まれ、十歳も二十歳も老けて見えた。
そこへ後ろから暗殺者!
無言でガリアの両手短剣を振りかざし、マレッティへ音も無く迫る!
ガリアの力で氷の上を滑るように地面を移動し……路地の壁すらも滑りあがって上空から襲撃!
マレッティから、とぐろを巻いて殺気が立ちのぼった。
「うぅああ!!」
振り向きざま、唸り声とともにその手から大小の光輪が幾重にも飛び出る。その数だけ暗殺者は空中で脳天から爪先までスライスされ、石壁に血糊をぶちまけた。
その、血の雨をものともせず、下段から強力に穂先の回転する長槍が突き出される!
マレッティはガリア「
路地から現れた鎖鎧の上にジャケットを着た筋肉質の女が、ガリアの長槍を手槍にまで縮め、回転も抑えて構えなおした。穂先には牙状の突起があり、物体を抉る。
そこへ、回りこんでいた三人目が合流する。マレッティが油断なく後ろも確認する。挟撃とは生意気な……そう思う間もなく、三人目が後ろから赤いボールのようなものを的確に
ボールは直撃コースではなく、マレッティの頭上に飛んできて、軽い音を立てて破裂した。とたん、火のシャワーがマレッティを襲った!
マレッティは毛織のフード付きマントを脱ぎ捨てて、地面へ転がった。火の雨が付着したマントが、一気に燃え上がる。
「そら、そらッ!」
大きな靴ベラのような木製投擲器のガリアで、やや離れた場所から容赦なくその短髪で目の垂れた若い女が赤い球を投げつけてくる。そこへまたもガリアの槍の柄を伸ばして、火の雨の範囲外から回転槍が突きかかった。石畳をも削る威力だった!
「こおぉのぉ!! 小賢しいんだってえええの!!」
目を吊り上げ、マレッティの怒りと残忍さが爆発する。
光度が上がり、光輪剣が発光して火の球を投擲するガリア遣いの眼をつぶす。
その時には、巨大な光輪が高速で飛び、袈裟掛けに投擲器のガリア遣いを声も出させず両断していた。
「なん……!」
驚く槍のガリア遣いにも、猛獣じみてマレッティ、剣を振りかざして光輪を投げつける。まず槍の先端を落とし、柄をバラバラに裁断してガリアを破壊! 眼を剥いて驚愕するその目玉へ、凶悪的な閃光を叩きこんだ。
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