第188話 驚異への対策
瞬間、丘の下で町を破壊しながら怒りで轟々と吠えている巨大竜が目に入る。
「アッ! アリ! アーリー! ア……!!」
ことばにならぬ。町は竜の吐く高温蒸気の息で蒸されて白煙を上げ、踏みつぶされ尾でなぎ倒され、壊滅していた。
「カンナ……どうやって倒す?」
「あれをですか!?」
「そうだ」
「あんなもの、倒せませんよ!」
「では、どうする?」
「おっぱらうしかないんじゃないですか!?」
アーリーは目を丸くしてカンナを見つめた。なるほど。
「……追っぱらう……か」
笑ってしまった。カンナが、何がおかしいのかと不審がった。
「そうだな。あんなものを倒そうとした私が愚かだった」
うまくマレッティがギロアを殺せば、支配を失ってどこかへ行ってしまうかもしれない、という考えもあった。
「では、どのように追い払う?」
「か、顔の回りでパチパチやるしかないんじゃないかと……ほら、虫がまとわりついたら、いやじゃないですか」
「虫……か、我々は」
アーリーは先程ハエみたいに払われたカンナを思い出し、苦笑した。
「いや、その通りだ。あいつに比べたら……な。では、それで行こう。あの高さまで、先程のように飛べるか?」
「わたしがですか? とべませんよ……」
アーリーはやや驚きを交えてカンナを見た。記憶がないのか。
「では、足元から攻撃を飛ばせるか?」
「や、やってみます……」
「あいつの吐く息に気をつけろ。火山のごとき高温の蒸気だ」
カンナは唾を飲んだ。もう、アーリーがぐちゃぐちゃに破壊された町めがけて、走って向かっている。カンナは急いで後を追った。
2
風に乗って低い位置を進む烏飛竜を背後より追うマレッティの船はしかし、つかず離れず絶妙の距離を保った。半刻も進まないうちに烏飛竜は次第に高度を下げ、やがて旋回をはじめたので、マレッティはあわてて岩影に船を隠させた。岸へ近づき、浮環をとって投げ捨てると素早く岩場に渡って小島の崖に身を寄せ、上空を確認する。ギロアはマレッティ達にまったく気づかずに、執拗に何かを探していた。そして、それを発見したのであろう、とある、けっこう大きめの島へまっすぐ下りた。翼をはためかせ、角度を変えて揚力を少しずつ落として、木々の合間に竜は上手に着陸した。ギロアはすかさず竜を下りて、藪をかきわけて崖を下り、海辺へ回ると膝までつかって波間を渡り、洞窟らしき穴に入って行った。
「あれだわあ……ちょっと、あの島へ行ってちょうだい」
船まで戻ってマレッティ、急いで漁師へ指示を出す。
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