第139話 カルマによる補佐

 「いつの話だ?」

 「半月くらい前」

 「海竜退治は、船でやるのか?」


 「カルマに隠してもしょうがないから云うけど、わたしのガリアは、水の上を歩くちからがあるから、あまり船は使わない。サラティスじゃ役に立たなかったけど、ここでようやくまともな仕事が。パジャーラが鎖投網のガリアで竜を抑えて、わたしがトドメ。それを、トケトケが遠距離から援護」


 「そうか……たった三人で、恐ろしくはないか」


 「そりゃ恐いけど……サラティスに帰っても、まともな仕事が無いんだもの。ここでやってくしかないから!」


 その意気や良し! アーリーはそう云いたげに頷くと、


 「竜を退治していれば、向こうから出張ってくれるのだな。分かった。我々が補助させてもらおう。我々のガリアは、海戦には不向きだからな……お前たちの補佐に回ろう」


 驚いてニエッタたちが何か云う前に、マレッティの金切り声。


 「カルマがこんな連中のセチュになるってわけえ!? アタマどうかしたんじゃないの、アーリー!!」


 「目的を見間違うなよ、マレッティ」


 珍しくアーリーがマレッティをにらみつける。忌ま忌ましげにマレッティもにらみ返し、歯ぎしりの音も豪快に口をつぐむ。その迫力というか、むしろ険悪ともとれるカルマの独特の雰囲気に呑まれ、ニエッタは冷や汗をかいた。カンナが、こんなものはいつもの調子とばかりに慣れた様子でぼけっとしており、それもむしろ不気味さを感じたようだ。


 「あ、あの、わたしら、二日も休んでないんで……次の退治は三日後にやるんで」


 ニエッタがそう云うと、職員へ竜を退治した証拠の新鮮な鱗を出した。カルマの三人が後ろから覗き込む。大きな漆黒に近い濃紺の鱗は、タータンカ号を静めた大海蛇という奴だろうか。それから、背鰭というか、皮膚の一部のついた一塊の肉片がごろごろと。報酬はサラティスの半分ほどというところだった。大きな鱗には三十カスタ、肉片が六つで百二十カスタだったで、百五十カスタを手にしていた。三人にしては、まあまあの報酬に思えた。


 「じ、じゃ、また……」


 そそくさと三人が出てゆく。この島で百五十カスタともなると、庶民の数年分の収入にもなるのではないか。まして、それが竜を退治するたびにもらえるのだ。


 「と、思いますでしょ。ところが、島の凄腕の漁師は、巨大なマグロやニシンやタラの大漁で、いっぺんにあの十倍は稼ぐときもあるんですよ」


 「へええ……」

 男性職員の言葉に、マレッティが感心する。

 「そんな大層な町には見えないけどもねえ」


 「島の反対側に御殿が立ち並んでますよ。温泉付の。丘の上に豪邸が。でも、それもここの十数年の竜の出現で、半分ほどは廃墟になってますよ。残ってるのは、公民館として使っているやつくらいで」


 「たいへんなのねえ」

 「さっきのは、どういう竜なのだ?」

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