第97話 フレイラ死す
「カンナばかりに気ィとられやがって、ばかか。お前の相手はオレなのによ」
フレイラが距離をつめた。
「なぁあめおってぇえ!!」
毒霧を吹きつけられる前に、フレイラは最終奥義を出した。空中に、何百という針が出現する。それが一斉に動けないデリナを襲う!
デリナが牙をむいた。その眼が、虚空の底から怒りに煮える。ざわり、と黒髪が膨れ上がる。
瞬間、フレイラは、視界の端に何かが光ったのを見た。
自分の針が陽光を反射したかと思った。
それは、限りなく細い光の一線となって、フレイラの胸を横から貫いた。
「……う……!!」
肺と心臓に一撃をくらい、フレイラがのけ反って硬直する。
その一瞬。
デリナの槍の穂先が飛んだ。それは正面からフレイラの鳩尾を突き抜けて、鎖が一気に戻って大穴をあけた。フレイラは、呆気なく地面へ転がった。
「フ、フ、フレッ、フレイラさん! フレイラ!!」
カンナが駆け寄る。
フレイラは手を振ってカンナを近づけまいとした。いや、カンナが倒れるフレイラを起こそうとしたとき、その胸元をがっしりと掴んだ。
「マ、マ、マレッ……テ……ィィ……!!」
凄まじい形相で際限なく血を吹き出しながらそう云うや、フレイラは絶命した。
「フ……!!」
カンナはフレイラを地面へ横たえた。震えが止まらない。
最後に、マレッティを心配したのだろうか。マレッティと力を合わせてアーリーを助けろ、ということなのか。それとも、なにか意味があるのか。カンナは分からなかった。それどころではなかった。
「……デリナァ……!」
フレイラは、約束通りデリナの動きを止めた。足から針を……いや、地面の針から足を引き抜いたデリナであったが、まだ猛烈な痛みと痺れが残る。これは、ダールといえど完治に時間がかかる。いましかない!
「デリナアアア!!」
「カンナ……カームィイイィ!!」
「ふんぬぁあああああああ!!」
カンナの気合が膨れ上がる。ビシャア!! ゴガラアアア……!! デリナの耳を連続する轟音が襲った。積乱雲の中の雷鳴を間近で聴いたならば、きっとこれほどのとてつもない轟音が鳴り響くのだろう。空気が震え、毒の霧は呆気なく押し流される。もうデリナが何を叫んでも何も聴こえない。カンナの雄叫びも聴こえない。そして、その溢れ出る震電! 眩しくて、デリナは眼を向けていられない。カンナが稲妻の化身となった。プラズマ光が奔流、灼熱が空気を焦がす。デリナはたまらず下がった。
「こ、これほどとは……おのれ……おのれまさか……!!」
デリナも決意した。
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