第82話 翌日
「じゃあ、カンナちゃんは助かるってわけねえ。いつまでかかるの?」
「分からない。炎が消えるまで待たなくては。マラカ」
「はっ」
「おそらくデリナは夜明けと共にサラティスへ攻撃を開始するだろう。私はバグルスを含め竜どもを十五ほど倒したが……」
「あたしも十はやっつけたわあ」
「それでも、あの軍団だ。一足先に都市へ向かい、竜の情報をフレイラへ伝えてくれ」
「承知」
「それから……楯をここに」
「……承知しました」
マラカがガリアを出してその身にまとうや、朝日に滲んで消えてしまったので、マレッティはさすがに目を見張った。
「ねえ、アーリー……あいつ……」
「バスクの斥候だ。使えるやつだ」
「ふうん……」
面白くなさげに、マレッティの口が尖る。
「さて……カンナの回復を待ち、我々は再度、吶喊する。今度は奇襲ではない。側面攻撃だ。竜は都市攻防戦へ集中するだろうから、そこを狙う」
「分かったわ」
マレッティは目を細めて、燃え盛る炎の中で身動きひとつしないカンナを見つめた。
5
完全に夜が明け、じりじりと上がった気温と共に竜の啼き声が遠くから聴こえてきたため、マレッティがその場を離れ、偵察に出た。少し歩くと、森が開けてこの高台から平原が見渡せる。サラティスまではおよそ十ルット(約二十キロほど)か。天気は良く、雲が無かったため遠眼鏡に城壁がよく見えた。どうやって籠城戦をしているものか。上空からは鴉飛竜と軽騎竜が火を吹いて都市を襲っているのが見えたが、バスクたちも対空戦に特化したガリア遣いを集め、必至に応戦しているのだろう。竜たちはあまり高度を下げず、いまいち攻めきれていない。
また正門の前にコーヴの決死隊がいるようで、猪突竜や山嵐竜を激しく撃退しているように見えた。
「はあん……なかなかやるじゃなあい」
遠眼鏡を離し、マレッティは素直に感心した。が、どうも釈然としない。
「……大規模攻城戦にしては、なんか手ぬるいなあ……目的は別にあるのかも? いや……バグルスが投入されたらそこでおしまいか」
マレッティはアーリーのところへ戻り、そのまま報告をした。
「そうだな。デリナの慎重な攻め口からすると、いまは様子見だろう。バスク達の残存戦力を確かめ、バグルスと大王火竜を午後か明日にでも投入するはずだ。正面のイノシシや大王へ戦力を集めさせ、手薄となった裏からバグルスを入れたならば、防衛側はひとたまりもないだろう」
「なんてったって、バスクの戦力不足よねえ。まさか、この時のために街道や村に竜を出現させて、そこの防御にバスクを割かせてたとは……。アーリー、夕べは、バグルスをどれくらい倒したの?」
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