第29話 行く先の暗がり
クウヤたちはまだ好奇の目にさらされている。ほとんど視姦と言って良いほど、彼らを見つめる目は脂ぎり、どす黒い欲望に満ちていた。クウヤたちは恥ずかしさに押しつぶされそうになったが、ソーンの目が恐ろしく身動き一つとることができない。周りの人間達は何やら記録を取っているらしかったが、クウヤたちにはどうでも良かった。クウヤたちの一番の関心はいつこの恥ずかしい地獄から解放されるかということだった。
「……さて。記録はとれたわね。次頼むわ。あら、恥ずかしいの?心配しなくて大丈夫よ。最初だけだからそんなに恥ずかしく感じるのは。すぐに何も感じなくなるから安心して」
ソーンは室内でクウヤたちを視姦する研究員たちに指示を出しながら、クウヤたちにヘビのような残虐な微笑みをみせる。彼女は何やら妄想に耽るように恍惚の表情を浮かべ、見るものを凍てつかせるような微笑みを浮かべる。クウヤたちはその笑みに背筋が凍てつく感じがした。彼女の表情は上気しみるものがみれば、性的に興奮していることは明らかだった。その証拠に彼女の意識は一瞬この世のものではくなっていたようだった。そんな ソーンの指示を受け、研究員たちは次の作業にかかり出す。彼らは拘束具の取り付けられた粗末なベッドのような拘束台を人数分用意する。
「さて、お遊びはおしまい。今度は一人ずつ検査するからこの台の上に寝てくれるかな?」
凍りつくような微笑みのままでソーンはクウヤたちを見つめる。クウヤたちはその台の上に寝そべる以外の 選択肢はなかった。研究員たちはクウヤたちを台の上に拘束し、検査用と思われる機械を準備し始める。ソーンはさっきとは違って、凍てついた表情で作業の進み具合を見守っている。そんな彼女のところに研究員の一人が準備完了を報告しにきた。
「……準備完了です」
「わかった。それじゃ、順番に始めて頂戴。記録はきちんととってね。青イチから始めて」
彼女の指示を受けて、研究員たちが機械を操作する。”青イチ”が機械の可動と同時に苦悶の表情を浮かべだし、うめき声を上げ始める。彼女の身体は次第に痙攣し始め、口から泡を出し始める。彼女の目は見開き、あらんばかりの涙を流し始め、白目をむきだす。
「……魔力量小、魔力注入試験開始します」
「初めて頂戴」
研究員とソーンの事務的で無機的な会話が続く中、”青イチ”は苦痛に耐えていた。淡々と研究員が作業を進める中、”青イチ”のこの世のモノとは思えない悲鳴が響き渡る。クウヤたちはその声に恐れおののき、いずれ来る自分の苦痛に怯えていた。そうしていると彼女の声がいつの間にか聞こえなくなった。拘束台上の"青イチ"は白目をむき失禁し、気絶している。
「……注入可能量小、規格外です」
「そう、残念ね……。ガタイの割に使えないわね。やっぱりクズはクズなのねぇ。……何か使い道はありそう?」
「”弾”に使うか、……処分するしかないですね。今の段階ではそのぐらいしか...」
「”弾”ねぇ……。まだ未完成なのよね、あの技術は……。まっいいわ。今の時点で急いで決める必要はないし。次、行きましょう」
ソーンは事も無げに淡々と研究員に指示する。クウヤたちは完全に実験動物以下のモノ扱いであった。クウヤたちはソーンと研究員との会話に恐怖を感じた。
(処分てなに⁈ 下手すりゃ殺されるのかよ、おい!)
クウヤは自分たちがもはや人間扱いされていないことに改めて恐怖を感じた。その恐怖は他の子供たちも同様であった。ただ、台の上に拘束された彼らには為す術はなかった。
「お次は……。”青のニ”……? ”青ニ”……、あぁ牙もちね。始めてもらえるかな?」
ソーンは研究員に指示すると、機械が動き出し、それと同時に”青ニ”が苦しみだす。目を見開き、ありったけの声を上げ、牙をむき出しにして叫ぶ”青ニ”。彼に対しては執拗に機械を動かし、何事か確かめるように執拗に苦しめる。あまりにも激しく執拗に責め立てられたため、彼はその場で気絶してしまった。
「あら? 気絶したわね。……どう? 使えそう?」
「そうですね。そこそこと言った感じでしょうか。生来の魔力量は大したことはないですが、注入可能量は多そうです。これなら、増強すれば使い物になりそうです」
「そう、ありがと。探せばクズの中にも多少は使えそうなものがあるのねぇ。…記録できたら次へいきましょう」
そう言うとソーンは目を細め、わずかに満足そうな表情を見せる。それから彼女は淡々と残りの子供たちを虐待し、データを取っていった。ひと通り作業を終わった子供たちは程度の差はあれ、皆全身痙攣し、心身ともにボロボロになっていた。中には”青イチ”と同じように失禁し気絶した子供もいた。そして、とうとうクウヤの番になった。
「……今回は不作ね。どれもあんまり使いものにならないわね。最後のはどうかしらね。今回は不作だから、期待はできないわね…。ま、いっか」
ソーンはそうぼやき、クウヤの検査に入るよう研究員に指示を出す。当のクウヤは台の上で彼女を見据え、怯えている。研究員は事務的に彼女の支持に従い淡々とクウヤの測定を始める。他の子供たちと同じようにクウヤも痙攣を始める。そこで、研究員がほかの子供たちとの違いに気づき、手を止める。
「どうしたの?」
「当たりですね、ソーン様。これは桁違いに魔力量が大きいですよ。現段階で魔力注入が必要ありません。このまま、戦場に出せるぐらいです」
「へぇ、最後の最後に大当たりね。わかったわ。……記録したら終わりよ」
ナゼかしらソーンは残念そうな様子で子供たちの検査を終了させた。方やクウヤは苦痛から開放されそうな雰囲気を感じ取り、ホッとしている。研究員たちはソーンの指示を受けクウヤたちの拘束具を解きはじめる。同時に気付け薬を使い、気絶した子供たちを回復する。
「さぁ、さっさと服を着て。今日はこれでおしまいにするわ。全員”青の部屋”へ戻りなさい。早く!」
ソーンは少々いらつきながら、子供たちを部屋へ追い返す。クウヤたちはソーンのいらつきが理解できなかったが、やっと地獄からの開放されるということの安堵感に包まれていた。
(今日はこれで終わったけど、明日からどうなるんだろう?)
クウヤは他の子供たちを介抱しながら、不安を覚える。クウヤたちの先行きは廊下のように暗がりの中にあった。
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