第8部



 次の瞬間、木陰で眠っていた少女の眼と口がカッと見開き、そこから溢れんばかりの光と共にパンドラとバクが現れ、地面に放り出された。

「グフゥゥゥッ・・」

「・・・・・・ここは?」

 地面に打ち付けられ転がるバクをよそに、綺麗に着地したパンドラは辺りを見渡す。

 そして木陰で横たわる羊頭の少女(・・・・・)を発見した時、パンドラは全てを察した。

「んばっ!」

 長い事うなされていた夢から醒めたかの様に起き上がった少女もまた、周囲を見渡す。

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・」

「眼が醒めたかね? メリー(・・・)」

 メリーが声のかけられた方を向くと、そこには本来の頭身に戻ったパンドラが立っていた。

「・・・・・・でられたぁぁぁ~~~~~~っ!!」

 立ち上がったメリーは嬉しさのあまりパンドラに抱きつこうと勢い良く駆け出す。しかし、

「おっ? ・・とっ・・とっ・・とっ・・とぉ?」

 思う様に脚に力が入らず、立ちくらみと共にメリーはその場でよろめいてしまう。

 だが間一髪、倒れこむメリーをパンドラが受け止める事で事なきを得た。

「君の本当の身体は、長い事横になっていたのだ。今はまだ恐らく歩く事すらままならんだろう。君の力を借りられればベストだったが、仕方あるまい」

「うぅ・・・・・・お? ・・オホーッ! いいことおもいついたーッ!」

 メリーはそう言うと、自らパンドラの前で紋章形態へと形態変化する。

「・・成程、契約してしまえば、二つの問題に対し同時に対処出来るな・・」

 納得したパンドラは、自らの紋章を重ね合わせ、メリーとの契約を完了させた。

 《Liberation解放Comicalコミカル |Dress《ドレス

》》

「ドレスチェンジ!」

 その直後、空中高くに出現した魔方陣の中から、巨大なクレーンゲームのアームと、それに掴まれたパンドラ似の巨大なパペット風の顔を持つヌイグルミが現れ、ゆっくりと降下すると、途中でアームのツメが開き、ヌイグルミが落下する。

 そして落とされたヌイグルミはというと、地面に倒れるのではなく、まるで着地したかの様に、直立状態のまま、ズン、とパンドラの前に降り立った。

 そこから背部に設けられていた大きなチャックがひとりでに開くと、その全長三~四メートル程の巨大なヌイグルミは一切の動きを停止する。

「コレは・・・・・・」

 今までの、自身を覆い尽くして変身するタイプのドレスとは明らかに異なる仕様に、パンドラは若干戸惑いつつ、開いているチャックに手をかけ、中を覗いた。

「ウーム・・何も見えんな・・・・・・」

 一面の闇で埋め尽くされたヌイグルミの内部に、流石のパンドラも警戒心を抱かざるを得ない。しかし、

「あのぉ~早よ入ってくれへん?」

「!? ヌイグルミが喋っただと?」

 突然ヌイグルミ(正確にはドレスチェンジのドレスだが)に話しかけられるという、前代未聞の事態に、パンドラは驚愕した。

「何や、喋ったらアカンのかい! あとヌイグルミやのうてコミカルドレスや。はよせんと敵さん来るで?」

「おっと、イカン」

 見れば、バクは既に起き上がって戦闘態勢に入っており、パンドラは慌ててコミカルドレスの内部へと身を投じる。

 背後でチャックが勝手に閉まると、それと同時に視界が明瞭になり、まるで自分自身がコミカルドレスそのものになったかの様な一体感を覚えた。

「さぁ、悪夢の続きだ」

 コミカルドレスのパンドラはそう言うと、【蝶・効・果バタフライエフェクト】を使い、一瞬でバクの背後に回る。

「ウンコパンチ!」

 コミカルドレスの指の無い手から、夢の世界の時の数倍のデカさを誇る大型ウンコが、バクの顔面へ叩き込まれた。

「ブフゥゥゥッ!」

「腹の下りと共に地獄へ落ちろ! ブリブリ流星群!」

 次の瞬間、空の彼方から大小様々な巻きグソと、それらを押し流す黄土色の流動体がバクの下へと飛来する。

「アァァァァァ! あブ・:?*+*+‘+=&%#」

 ウンコの濁流に呑まれたバクに対し、コミカルパンドラは、黒丸で作られたつぶらな瞳から、細い二筋の光線を放ち、その両腕を切り飛ばした。

「ギャァァァァァ!!」

 更にコミカルパンドラは口内から舌を勢い良く伸ばし、切り飛ばしたバクの両腕を掴み取ると、それを引き寄せ、口内へと放り込む。

「ン。・・ンン。・・まぁまぁの味やな」

「それは何より」

 すると、コミカルパンドラの鼻にあたる部分からバクと同じ、象の様な鼻が生え、口からは猪の様な牙が生えた。

「コミカルドレスは食べたモンの特性をコピーするんや。せやから今はアイツと同じ能力持っとるな」

「ホウ、ならば・・」

 コミカルパンドラは自身を風船の様に膨らませると、そこからバックブースカーを繰り出す。

「グゥゥ・・何度やっても同じだ。そんな技がオデに効くかぁ!」

 バクは最初にパンドラが繰り出した時と同様に、その鼻による吸引力でガスを吸い尽くそうとした。だが・・

「!」

 バックブースカーを繰り出したコミカルパンドラはその直後、同じ鼻を吸い込むのではなく吹き出す事に使い、その巨体を高速回転させ始める。

 すると、繰り出していたバックブースカーのガスが、バクによって吸い込まれる前に、コミカルパンドラによって巻き上げられ、大規模なオナラの竜巻を作り出し、バクへと迫った。

「オナラ旋風脚!」

「ウ、ウグゥアァァァ~~~~ッ!」

 オナラを纏った超高速の連続回転蹴りがバクを襲い、直撃を受けたバクは、そのまま巻き上げられて空中で爆散したのである。



《眠れる森の美女編――最終章へと続く――》

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