第3部



 その瞬間、【蝶・反・応バタフライリアクト】による近未来ビジョンが、パンドラに未来の自身からの攻撃の到来を告げた。

 そして瞬時にスニーズを掴み上げると、攻撃が来る地点へと放り投げたのである。

 そのスニーズが地面に墜落する寸前、未来から訪れた大型フォースボールがスニーズへとクリーンヒットし、彼は再びパンドラの元へと舞い戻ってきた。フォースボールと共に。

「やれやれ・・・・・・」

 そう呟くとパンドラは両手からフォースバリアを展開し、飛ばされてきたスニーズごと未来の自分からの大型フォースボールを受け止めた。

「・・・・・・まさか自分の攻撃を自分で受け止める日がくるとはな」

 さて・・・・・・と、パンドラが再びスニーズを掴み取ろうとすると、スニーズはそれよりも一瞬速くその手を逃れ、パンドラから距離を取る。

「っ、オイラも甘く見られたもんだ。おんなじ手が二度も続くはずねーだろ!」

「フム・・・・・・確かにまた貴様を捕らえて掴み続けているのは面倒だな。なぁ? Moon-Rayムーンレイ?」

 次の瞬間、パンドラの呼びかけに応えるかの様に、その左眼が【魔導人形の眼マギカドールアイ】を開眼すると、紫の中で山吹色に輝くその瞳に、新たに十字の光を灯した。


 【Liberate解放Butterflyバタフライ Kinesisキネシス


「【蝶・念・動キネシス】!」

 新たな能力に目覚めたパンドラが大きく距離を開けたスニーズへ右手をかざすと、それとほぼ同時に、何も触れていない筈のスニーズの身体が突然ふわりと宙に浮き始めたのである。

「な、何だ? 何だコレは!? ェエッキシッ!」

「コレなら貴様がどこに逃げようと関係無いな!」

 不適な笑みを浮かべながら【蝶・念・動バタフライキネシス】でスニーズを掴み取ったパンドラは、再び【蝶・反・応バタフライリアクト】による近未来ビジョンに従い、スニーズをその場所へ移動させると、攻撃が来る反対方向へと向かせた。

 直後に現れた無数のフォースボールが空中に捉えられたスニーズを容赦なく嬲っていく。

「ウボボボボボァッ!」

 そして更に現れた衝撃がそのままスニーズの意識を奪うに至った。

「あの衝撃は・・ムーンライトインパクトか」

『今のうちに止めを刺しましょー!』

「そうだな・・ムーンライトキック」

 スニーズが空中で気絶しているうちに、右脚へ波導エネルギーを凝縮させたパンドラは、フォースウィングを展開して上昇しキック体勢に入る。

 そして満月と蝶の描かれた紋章と共に振り下ろされたその鉄槌は、時のかけらが化けたゴブリンの身体を遂に撃ち砕いたのだった。

『やりましたね!』

「いいや、まだだ。まだやっておかなければならない事がある」

 喜びの声をあげるアリスを制すると、パンドラは時のかけらへと戻ったスニーズの前に立つ。

『やっておかなければならないって、一体何です?』

 疑問を浮かべるアリスをよそに、パンドラは左右の手からフォースボールを作り出すと、それらを合体させ大型フォースボールを作り出した。

『パンドラさん? 何を・・』

 次の瞬間、アリスが再度問いかけると同時に、パンドラはその大型フォースボールを時のかけら目掛けて勢いよく叩きつけたのである。

『エェェェーーーーッ!? な・・エッ??』

「何を驚いてる? 君も飛ばされてきた波導魔法を見たろう?」

『あー、あの未来のパンドラさんが飛ばしたって言う、アレですか?』

『その未来の私というのが他ならぬ〝今〟だと思うが?』

『・・あっ!』

 ようやく合点がいったらしいアリスを尻目に、パンドラは時のかけらとなった言葉無きスニーズに攻撃を続けた。

 生み出すそばから次々とフォースボールを投げつけたかと思えば、足先からフォースブレードを展開し斬りつける。

「ムーンライトインパクト」

 更に右腕に高圧縮された波導エネルギーが打ち込まれるが、それでも時のかけらは粉々になる事はなかった。

「フム、全て順調に過去に送られたようだな。ではこれで・・おっと、忘れていた」

 時のかけらを回収しようとしたパンドラは、そこで何かを思い出した様子を見せると、かけらを再び地面に置き、今度は胸部中央へ波導エネルギーを集中させる。

 そしてそこから放たれたフォースカノンまでキッチリ過去の時間へ飛ばされたのを確認すると、今度こそパンドラはやり遂げた様子で地面に転がる時のかけらを手にした。

「やれやれ、とんだ寄り道をしてしまった。いやしかし貴重な戦いではあったな」

『これからどうしましょう? 童話主人公だけを追うわけにもいかなくなりましたし・・・・・・』

「全て集めると覇権を握れるという時のかけらから優先的に探したい所だが、奴等は生体波導がないのが問題だな」

『生体波導がないとパンドラさんでも追いようが無いですもんね・・』

「だが、全て集めた時に世界の覇権を手に出来るというのが本当なら、今この世界で動ける勢力の殆どはそれを狙いにいく筈。という事は当然、あの童話主人公もそれを集める為に動いている筈だ」

『それなら・・!』

「やはりあの童話主人公の追跡を再開した方が良さそうだな」

『ハイッ!』

 考えを巡らせた末に、結局当初の予定に逆戻りする事になったパンドラは、持ち前の生体波導感知能力を使い、謎の童話主人公の行方を捜す。

「向こうか・・・・・・」

 大方の進行方向を定めたパンドラは、フォースウィングを展開し、その場を後にした。

 童話主人公の生体波導を追ってしばらく低空飛行で移動を続けていたパンドラは、前方にそびえ立つ巨大な氷壁の前で進行を止める。

「行き止まりか」

『飛び越えますか? それとも迂回しますか?』

 アリスが提示した選択肢に、パンドラは視線を果てしなく続く氷壁の両端へと走らせた。

 すると、とある一部分に、人が通れる位の穴が開いているのを発見したのである。

「アレは何だ? ただの穴ぐらか?」

 注意深く見つめるパンドラは、そこから何かに引き込まれるような感覚を覚え、そっとその中へと足を踏み入れていく。そして・・・・・・

「ホウ! アリス、どうやら我々はツイてる様だぞ」

『わ!』

 氷窟となっていたその奥には、二匹目のゴブリンと言うべきか、二つ目の時のかけらと言うべきか、とにかく捜し求めていた物がまた一つ見つかったのだ。

「はぁン、この俺様〝豪運のハップ〟を探し当てたからには中々の運なんだろうが、まァそれもここまでだ。お前等の攻撃が、俺様に届く事は無ぇからな!」

「それはいい、先程丁度同じ事を言っていた奴を一人倒したばかりだ」

「テメェ・・」

 表情を一変させるや否や、ハップは両腰から二丁のリボルバー銃を取り出し、轟音と共にエネルギー弾を撃ちつける。

「【蝶・念・動キネシス】」

「!」

 それに対し、パンドラは【蝶・念・動バタフライキネシス】を発動させると、迫り来るエネルギー弾を一瞬にして空中で静止させ、そこからハップ自身へとその攻撃を送り返してみせた。ところが、

「!?」

「フン」

 送り返した筈のその攻撃は何故か、ハップ自身の手前でピタッと停止したのである。

「攻撃を止められんのが自分だけだと思ったか?」

「何?」

 するとその直後、停止していた攻撃が〝全く同じ軌道を通って〟パンドラの方へと逆戻り、パンドラが【蝶・念・動バタフライキネシス】で止めた位置まで戻ると、そこから更に追加で放たれたエネルギー弾によって弾かれるようにしてパンドラを捕らえた。

「!?」

「カッカッカァ、油断したなぁ」

「それはどうかな?」

「あン?」

 煙の中から聴こえた声にハップが眉間の皺を寄せると、寸前に展開されたフォースバリアのおかげで直撃を免れていたパンドラがその姿を見せる。

「チイッ!」

 ハップが慌ててリボルバーを構え直すも時既に遅く、その前方では既にパンドラが胸部中央へ波導エネルギーをチャージしきっていた。

 次の瞬間、山吹色の奔流が、遅れて発射されたハップのエネルギー弾を呑み込み、そしてハップをも呑み込もうと目前に迫る。

「ウグッ! グゥゥッ・・・・・・」

 だがしかし、両肩を閃光がかすめたものの、フォースカノンの殆どがハップに届く事は無かった。

 その先端のみが塊の様に停止し、パンドラから続く流動する光がその塊を徐々にハップへと推し進めている。

「ヌゥ、何てェ攻撃しやがる。この俺が先っぽ止めんので精一杯だと? ヘッ、だが結局コイツも俺を焼き払うには至らねェ。まだ運は俺に味方してる」

「コレはスゴイ」

「!?」

 突然、背後から聴こえた声に驚いたハップが振り向くと、そこにはほんの一瞬前までフォースカノンを放ち続けていたパンドラが拍手をしながら不敵な笑みを浮かべていた。

 そしてパンドラは一瞬でハップの顔面を掴み取ると、その手にフォースボールを生成していく。

「ンン! ンガアアッ!」

「私の最大火力の魔法を食い止めるとは大したものだ。だがゼロ距離でも同じ事が出来るかな?」

 そう言いながら、パンドラは徐々に手の力とフォースボールの出力を上げていく。だが、

「?」

 確かに両方のパワーを上げた筈のパンドラだったが、フォースボールの規模がみるみる内に縮小していき、遂には消滅したのである。

「これは・・・・・・消えた?」

 謎の現象について考えを巡らせるパンドラだが、顔面を圧迫されながらも、至近距離から超高速のエネルギー弾を発射する事で、見事に隙を突いたハップにより後方へ盛大に吹っ飛ばされてしまった。

「ッ、アァ・・クソが。俺様の端正な顔立ちがオジャンになったらどうしてくれんだ」

「・・・・・・(確か奴は私が跳ね返した攻撃を全く同じ軌道で戻していた。そしてコイツ等は時の結晶のかけら・・まさか)巻き戻したのか」

 パンドラがゆらゆらと立ち上がりながら辿り着いた答えを口にする。

「そうさ、ちなみにエネルギー弾今のは早送りだがな」

「成程、貴様の能力は理解した。ならばやるべき戦術は一つだ。【蝶・剛・筋ストロング】」

 攻撃の時間を全て操作されると判断したパンドラは、時間停止の影響を受けない自分自身による直接攻撃であればハップの能力を受けないと考え、【蝶・剛・筋バタフライストロング】による肉弾戦へと方針を定めた。

 まず、【蝶・効・果バタフライエフェクト】でハップの正面至近距離に再出現し、一気に距離を詰めると、迎撃の為ハップが構えた銃を掴み取り、そのまま握り潰す。

 一丁目のリボルバー銃が暴発する中、二丁目を【蝶・念・動バタフライキネシス】で引き寄せると、これも握り潰し、ハップの攻撃能力を奪った。

「チイッ!」

 更にそこから右回し蹴りを繰り出し、氷窟内の壁面に叩きつけると、再び【蝶・効・果バタフライエフェクト】で距離を詰め、ボディを殴りつけていく。

 身体中に拳によるクレーターが出来、既に白目を向いた状態のハップに、パンドラは攻撃の手を緩めず、前蹴りや身体を素早く回転させてからの後ろ蹴りを繰り返すと、最期に右脚でハップを壁に押さえつけた。

「・・ムーンライトキック」

 右脚に急速に充填された波導エネルギーが、押さえつけられたハップに叩き込まれ、その突き抜けた衝撃が後ろの氷壁を粉々に打ち砕いていく。



《白雪姫編――第4部へ続く――》

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