最終部

「? どうした?」

 首もとのブローチにアリスが戻るとパンドラは尋ねる。

『? ?? 何かムーンフェイスと戦ってたら、突然戻されちゃったんです』

「・・・・・・童話主人公は同時に二人以上出せないのか」

『赤ずきんさんを倒したんですか?』

「あぁ。君の言うとおり封印を完了した。後は・・・・・・」

「ンンンンンッ!」

 アリスが戻った事で重力球から解放されたらしいムーンフェイスが両腕の再生を終え、両方のアクティブアームを同時に射出した。

 パンドラはそう言って、飛来するムーンフェイスのアクティブアームを掴み取る。

「コイツだけだ」

 次の瞬間、パンドラの身体を紅色の焔が包み込み、捕まれていた射出中のアクティブアームから、焔がワイヤーを伝い、両腕を一瞬で融解させた。

「グゥゥゥッ!」

 ムーンフェイスがうめき声をあげ、融解した事で再生を封じられ愕然とする中、パンドラは焔の中から新たな姿となって現れる。

 漆黒だったゴスロリ服はやや暗めのワインレッドのゴスロリ服へと変化しており、黒く艶やかだったストレートロングの髪の毛と、黒い手袋に覆われていた両手に至っては、燃え盛る紫色の焔と化していた。

『わっ! まるでドレスチェンジしたみたいです!』

「ドレス・・・・・・チェンジ?」

 童話主人公を封印契約したパンドラが、その力で新たな能力【ドレスチェンジ】(赤ずきんの焔の力を取り入れた今回の姿はさしずめ【フレイムドレス】と呼べる)に目覚めた瞬間である。

『あっ! パンドラさん! 髪! 髪の毛が燃えてます!』

「ん? これは・・・・・・違う。髪が燃えているのではない。焔そのものになっている」

 そう言いながらパンドラは燃え盛る焔の髪を掴みまじまじと見つめる。

『焔に・・・・・・?』

 しかしそれもつかの間、ムーンフェイスの両足から伸びたビームサーベルが、空を引き裂き、パンドラの首元に迫った。

「馬鹿め油断しおって。このまま首を斬り飛ばしてくれるわ!」

『パンドラさん!』

 だが、それとほぼ同時にフレイムドレス状態のパンドラは、焔の髪の毛を操ると、ムーンフェイスのビームサーベルを食い止め、そのまま押し返したのである。

「グッ!」

 更に両腕を失ったムーンフェイスに追撃を加えるべく、パンドラは両手に焔を纏ったフォースボールを生成した。

『波導弾にも焔の属性が付くんですね!』

「そのようだな。という事は・・・・・・」

 パンドラはそこから二つのフォースボールを合体させ、焔属性の大型フォースボールを完成させる。

「やはりか。これなら・・・・・・どうだっ!」

 作り上げた焔属性の大型フォースボールを、パンドラはムーンフェイスへ向けて解き放った。

「それで勝ったつもりか!」

 対してムーンフェイスは、ようやく凍結状態から解放された砲口から大型粒子ビームを発射し、対抗する。

 粒子ビームは焔属性の大型フォースボールと衝突すると、あっという間にそれを飲み込み、そのままパンドラへと迫った。しかし・・・・・・

「ハァッ!」

 パンドラも負けじと胸部中央にフォースエネルギーをチャージし、出現した魔法陣から、焔を纏った紫色のフォースカノンを放つ。

 激突した二つの大型ビームは、出遅れた分、パンドラ側が押されている状態であり、パンドラの逆転には今一歩かと思われた。だが・・・・・・

「まだまだァァァっ!」

 パンドラが更に魔力を込めると、焔属性のフォースカノンはすぐさま押し返し、そしてそのままムーンフェイスをもその業火の中に飲み込むのだった。

「グッ・・・・・・グォァァァッ! ヌァァアアアァァアアァッ!」

 その焔の中に蠢く黒いシルエットを最後に、彼等の脅威は赤ずきんの世界から完全に消え去ったのである。


          *


『ここは・・・・・・・』

 暴走してからパンドラに倒され、封印契約されていた赤ずきんはパンドラのブローチの中でその意識を取り戻した。

「気が付いたか」

『お前は・・・・・・?』

「パンドラ、というのが私の名だ。君はムーンフェイスに操られて街を破壊し、住民共を攻撃していた」

『何だと・・・・・・?』

 ブローチ内から見えた外の街の光景に、赤ずきんは愕然とする。

『何だこれは・・・・・・これを私が?』

「住民共には私が君を封印してそのまま連れて行くと言ってある。君はもう少し休め」

『どこに、連れて行く気だ?』

「私から生みの親を奪った奴の下へだ。君にはこれからそれを取り戻すための戦いに力を貸して貰う」

『・・・・・・分かった。どうせこれでは・・・・・・皆に会わせる顔も無い』

 赤ずきんはそれだけ答えると、再び眠りについた。

 そこへガルルがフェンリルのメンバーを引き連れてパンドラの下へやってくる。

「大分世話になっちまったな」

「私は自分の目的を果たしただけだ」

「少しゆっくりしてったらどうだ?」

「悪いが生憎急ぎの身だ。もう行かなくては」

『でもパンドラさん。故郷を旅立ってからこっち、全く休んでませんよ? 万全の体制で臨むためにも、少し休みましょう!』

「私は生態兵器だ。兵器に休息は必要ない」

『そんな事無いです。兵器だって使い続ければきっとどこかは消耗する筈です。だからその・・・・・・メンテナンスですよ! これはメンテナンスです!』

「メンテナンスだと? フン、いいだろう。一日だけ駐留するとしよう」

『やったぁ! 決まりですね!』

「・・・・・・(私が兵器でもこいつ等は一応人間か。だがそこにあえて触れずに、あくまで兵器サイドの理屈で私を説得するとは・・・・・・アリスめ、さては策士か。はたまたただの天然か?)」




《第三章――金太郎編に続く――》

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