※78 後悔なんてしてません2
ベッドの枕元に置かれたコンビニの白いビニール袋。袋の中にはコーヒーゼリーが六個入っている。
一日一個食べるのを夏樹はとても楽しみにしており、そのことは久志ももちろん知っていた。
「夏樹、君の食べる分がひとつ減ってしまうが、構わないかな?」
夏樹の顔を覗き込みながら久志が尋ねる。
だが、前も後ろもどうしようもない状態になってしまっている夏樹に、自分の食べる分のコーヒーゼリーが少なくなるとか、今聞かれても答える余裕などもちろんない。
「……仕方がないな。使った分は後でまた買ってあげるから、それでいいだろう?」
荒い息で顔を上気させながら、夏樹はただ久志を見上げることしかできない。そんな夏樹の反応を一体どう解釈したのか、久志は後で新しいコーヒーゼリーを買うからと言って、枕元にあるコンビニの袋に手を伸ばした。
「ひとつで足りそうだな」
久志が袋の中からコーヒーゼリーをひとつだけ取り出し、シート状になったふたを剥がす。
「なるほど、ミルクは表面にかけてあるのか」
プラスチックの容器を傾けて妙なところに感心しつつ、久志はその中に人差し指を突っ込んだ。
半分蕩けた意識の下で、久志さんもコーヒーゼリーが食べたかったのかなどと、ちょっと的外れなことを考えていた夏樹も、久志が指でコーヒーゼリーを混ぜ始めたのを見ると目を見開いた。
「久志さん……何して……?」
真剣な顔をした久志が指でコーヒーゼリーを混ぜている。
グチャグチャという、聞きようによってはとてもいやらしく聞こえる音とともに、甘い匂いが部屋中に広がる。
「久志さん」
「うん? 待ちきれなくなったのか? ――――そろそろいいかな。夏樹、ちょっと後ろを向いてごらん」
「――えっ、何!?」
久志はおもむろに夏樹の体をひょいとうつ伏せにして、細い腰を持ち上げた。顔はシーツにつけたまま、腰だけを高く上げるという格好だ。
尻尾が取り外された部分には丸く切り取られたような穴が開いており、夏樹の固く閉じられた蕾が丸見えになっている。
「夏樹……とても素敵だ」
久志がうっとりとした様子で夏樹に告げた。
「久志さん……あの……この格好、嫌です。は、恥ずかしいです」
あまりの羞恥から夏樹は顔を上げることができない。
嫌だという夏樹の声が聞こえているはずなのに、久志は夏樹の声などまるで聞こえていないかのようににこりと笑みを浮かべるだけだ。
「久志さん」
久志はコーヒーゼリーのカップを高く掲げると、丸く切り取られた穴の上でゆっくりと傾けた。
クラッシュ状になったゼリーが、ぽとりぽとりと尻尾の穴の上に落ちる。
「ひっ……あ、あっ」
コーヒーゼリーが落ちる度に、夏樹の腰がピクリと動いた。
「夏樹、じっとしていないと君の好きなコーヒーゼリーが零れてしまうよ」
「久志さん……や、だっ」
「うん。すぐに食べさせてあげよう」
そう言うと、久志はこぼれ落ちそうになっているコーヒーゼリーを指先ですくい上げ、固く閉じられた蕾へ塗り込めた。
どのくらいの時間が経っただろうか。
初めての夏樹に少しでも負担がかからないようにと、久志はじっくりと時間をかけて夏樹の蕾を解した。
最初は指先をほんの少し入れることさえできなかったのに、久志の努力と夏樹の我慢のかいあって、しばらくするとそこは久志の指を二本、根元まで受け入れるまでになっていた。
夏樹の体温に温められたせいか、コーヒーゼリーの甘い匂いがより濃厚なものとなり寝室の中に充満している。
やや粘り気のある水音をたてながら、久志は夏樹の中で二本の指を広げ、ぐるりと手首を回した。
「ひっ、や……あ、あっ……」
同時に、今にも達しそうになっている前の部分を久志が着ぐるみ越しにギュッと握り、吐き出る熱をせき止める。
「もうこっちは痛くはないだろう?」
久志が夏樹の後ろに入れた指を意味深に動かした。
その行為に夏樹が恨めしげに背後を振り返ったが、その目は快感の涙で潤んでいる。
「そんな顔をしても逆効果だよ、夏樹。私もそろそろ限界なんだ──」
そこで一旦、久志は言葉を切った。
「…………?」
「──夏樹、私を、受け入れてくれるかい?」
一拍置いて、様子を窺うように告げられた久志の言葉に、夏樹はこくりと頷いた。
夏樹は寝室の天井を見ていた。
天井に幾何学模様でもあったならば、その模様の数を数えるなどして気をそらすこともできただろう。だが、残念なことに寝室の天井は模様ひとつない真っ白なものだ。
夏樹の中にある久志の指はいつしか二本から三本に増やされ、内壁を広げるように動く三本の指の動きに嫌でも集中してしまう。
夏樹はぎゅっと目を閉じた。
「ん……ん、んっ」
「夏樹、声を我慢しないで。君の感じている声が聞きたい。私に聞かせてくれないか?」
久志が夏樹の体を抱きかかえ、うつ伏せにする。その背中にのしかかり、背後から耳朶を食むようにして、その耳元で久志が囁いた。
夏樹は漏れ出てしまう声を抑えるために咥えたシーツの端をぎゅっと噛みしめ、首を横に振った。
「今さら照れなくてもいいのに。それじゃあ…………これは?」
久志は三本の指を揃えると、今度は浅い部分で抜き差しを始めた。
抜き差しする度に、ちょうど指の腹が夏樹の中にある敏感な部分を擦り上げる。
夏樹はたまらず背中を仰け反らせ、噛みしめていたシーツを口から離した。
「――ひ……っ、あ、ああっ!」
これまでのじりじりとした快感とはまた違った、張り詰めている昂りへダイレクトに伝わる鋭い感覚。触ってもいないのに、今にも弾けてしまいそうになる。
先端の小さな口からとろとろと溢れている蜜は、すっかり着ぐるみに染み込んでおり、下腹部分をぐっしょりと濡らしている。
「や、あ……ひさ……ん、も、でるっ」
「まだ出してはダメだよ。ちゃんと私のもので感じて欲しい」
いやいやと頭を横に振りながら、着ぐるみの内側へ擦りつけるように夏樹が腰を揺らめかせる。
「――――こら。待ちなさい」
そう言うと、久志は夏樹の細い腰を動かないように捕まえ、限界まで熱くはち切れそうになっている前を着ぐるみの上からぎゅっと握った。
外へ出ようとしていた熱の塊が、出口を失い夏樹の中で渦巻く。
「や、だっ! ひさ、さん……やっ……はなして……っ」
夏樹が堪らず背後を振り向き、久志へ訴えた。
赤く泣きはらした目で縋るように見つめられ、久志が息を飲む。
「――夏樹、本当のうさぎのようだね。たまらなく可愛いよ」
「ひさし、さん」
「イキたいかい?」
久志が夏樹の頬へキスをしながら尋ねる。
夏樹は一瞬ふるりと体を震わせ、頭を小さく縦に振った。
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