71 俺の意思じゃないですから!4
昨夜、夏樹に付き合うとは言ったが、薬の効果があれほどとは久志も予想していなかった。
達しても、達しても、夏樹を襲う快感の波は引かず、最後は何も出ない状態にも関わらず、達したように何度も体をふるふると震わせていた。
明け方になって、やっと状態は落ち着き、今夏樹は久志の腕の中で静かな寝息を立てている。
「全く……自分の自制心を褒めてやりたいよ」
久志はため息をつくと、夏樹の額をそっと撫でた。
さすがにもう着ぐるみは脱いでいるが、久志に擦り寄って寝息を立てている姿は、まるで巣穴で安心しきって眠る子リスのようだ。
薬の効果が強すぎたため、昨夜の夏樹は半分意識を飛ばしており、執拗に久志へ自分の昂りを何とかして欲しいと強請った。
もちろん久志は出来るだけそれに応えたが、最後の一線だけは越えなかった。
「夏樹」
露わになった夏樹の額に久志が触れるようなキスを落とす。
「――――ん」
夏樹の額に落とされたキスは、閉じた瞼をたどり滑らかな頬へと移った。柔らかな果実を食むように久志が頬へ軽く歯を立てる。
「……あ、や……ん」
「夏樹」
「ん……久志、さん?」
頬にやわやわとしたくすぐったさを感じた夏樹が、ゆっくりと目を覚ました。
「おはよう」
「おはよう、ございます……あの……」
「気分は? 頭は痛くないか?」
「大丈夫です、って――え? えっ!? 久志さん? ここ、どこ……」
ベッドの中で久志にくっついたまま、夏樹がキョロキョロとあたりを見回す。
徐々に自分の置かれている状況が分かってきたのか、夏樹の顔色が変わった。
「ここ……もしかして、久志さんの……」
状況確認が終わって顔をもとの位置に戻すと、今度は至近距離に久志の顔があり、夏樹はぎゃっと奇声を上げて布団の中に潜り込んだ。
「うわあっ!」
今度は布団の中から夏樹の叫び声が上がる。
「夏樹? 大丈夫か?」
「ひっ、ひっ、ひさ……な、何で……俺、はだか……っ!?」
「ああ、昨夜はかなり汚してしまったからな。脱がせたが?」
「――――は?」
布団の中から夏樹がそろそろと顔を出した。
「何回出したかな。途中までは数えていたんだが」
「は? え? あの、出すって……」
聞かない方がいいと、どこかで警鐘が鳴っている。
だが、夏樹は恐る恐る久志に尋ねた。
「えっと、久志さん……俺、何か汚すようなものを出したんですか?」
「うん? ああ。そうだな」
言いながら、久志が夏樹の頭を撫でる。
「君は理央くんから後ろに薬を入れられたと言っていたが、恐らく腸からダイレクトに薬の成分を吸収してしまったのだろう。普段より興奮してしていたようだね。私が手で君のものを擦って、出すのを手伝ったのだが……大丈夫か? 君から求められるまま、明け方まで擦り続けたから……腫れてるんじゃないか?」
「腫れ――え?」
「だから、ここが」
久志の言ったことを頭の中で整理するために、夏樹の動きが止まる。
その一瞬をついて、久志がおもむろに夏樹のくるまっている布団を捲った。
「先の方が少し赤くなっているか? これは用を足す時に痛むかもしれないな」
「…………」
「薬を塗った方が良いかもしれない――ちょっと待っていなさい。薬を持ってこよう」
「…………」
どう反応すればいいのか分からず夏樹が固まっている間に、久志は夏樹の足の付け根のものを検分し、薬を取りに寝室を出ていってしまった。
ベッドに横たわり、久志が出ていったドアの方を夏樹が呆然と見つめる。
しばらくして、ようやく頭の中が働き始め、夏樹はゆっくりと自分の股間へ視線を移した。
なるほど、確かに先端の敏感な部分が普段よりやや赤みがかっている。
(明け方まで? 俺が求めた? 久志さんに……?)
「~~~~~~っ!」
理央に薬を入れられた後、夏樹には途中からの記憶がない。自分の記憶にない間の出来事を察した夏樹は、声にならない悲鳴をあげるとベッドの隅で頭から布団を被った。
(何、どういうこと!? 俺のを……久志さんが!?)
しかも久志の言う通りだとすると、夜通し夏樹が久志に触って欲しいと求めたことになる。
(まさか、俺……とうとう最後まで……?)
夏樹は布団の中でそっと自分の後ろに手を伸ばしてみた。
初めての時は、受け入れた場所にかなりの違和感が残るらしいと聞いたことがある。だが、夏樹の後ろはこれといった痛みも違和感もなく、普段と変わりない。
久志のテクニックが相当のものだったのか、それとも……。
(久志さんのが意外と小さかった……? いや、前にちょっとだけ見たことがあったけど……小さくはなかった……はず)
「失敬だな」
布団に潜って色々と考えを巡らせる夏樹の頭上で、憮然とした久志の声がした。
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