第六十五話 欲望という名の電車
『欲望』という名の電車に乗って
『希望』という停留所で降りようとした
『渇望』していた想いはいつの間にか醜く
『変貌』し
『繁忙』に紛れて
『光芒』の果てに消えた
『羨望』だけがぽつりと取り残され
『存亡』の危機にある自我を抱え
『絶望』という名の終着駅に向けて
『茫茫』たる荒れ野を走る
◇ ◇ ◇
欲望に『望み』が付いているのは、欲の全ては実現出来ないからだ。欲を叶えようとすれば、どうしても現実との擦り合わせをしなければならないのだ。叶えたい欲を小さくすれば、それは実現させやすい。一般に欲張り過ぎるなといわれるのは、そういうことなのだろう。しかし、だから大きな欲を持つなということにはならない。欲が大きければ大きいほど現実と大きく乖離し、単なる願望で終わってしまう可能性が高いというだけ。
生きている以上、いや生きようとしている以上、欲はそのエネルギーの源泉である。食べる、眠る、交尾の相手を探す。交尾する。全ては他の生物と同じ、生存・繁殖本能に基づく欲。それは欲の一階部分になり、人間はその上に『幸福』『快楽』という二階を築こうとする。でも一階と違って、二階部分には具体的な形がない。だから欲に『望み』が付いてしまう。
欲が生きることにおける基本的なエネルギーである以上、それを小さくせよ、無くせという働きかけは、時として『死ね』という命令に等しくなる。当然、欲の削減を個人から個人に直接強いることはさすがに無理がある。それゆえに、組織やら国家やら神やら、実体のない大きなものに人格の皮を被せて欲の削減を命じようとするのだ。皮を剥がせば、中身は誰かの欲に過ぎない。
君はつまらないギミックに騙されるなよ。
【 了 】
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