第六十二話 差す

【水を差す】

「いつまでふわふわ夢みたいなこと言うとんね!」


【紅を差す】

「そういうとこだけオトナの真似しくさって!」


【魔が差す】

「おまえ、相手が誰かも確認しいひんかったんか!」


【嫌気が差す】

「親の気持ちも考えんと、勝手なことばっかしよってから」


【薄日が差す】

「しゃあない。今更時間は戻せへんしな……」


【油を差す】

「じっとしとったら錆びるで。きりきり動かんかい!」


【棹を差す】

「一人やない。もう二人なんや。気張りぃ!」



 ええ。いろんなものが差せるんです。

 差した分だけ、人生が動きます。



【 了 】

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