第二十八話 待ち合わせ
(1)フレーム
年末。駅前のスチールモニュメントが、無数の電飾で彩られ始めた。友人が来るのを待っていた私は、それを駅のコンコースからぼんやりと見下ろしていた。
フレーム。
無骨な鉄骨が、地上の星模様をざくざくと無表情に切り取る。
地上を支えているのは俺だと、光の中にぬっと顔を出して。それでも、それ以上は何も言えずに黙っている。
フレーム。
一つ一つはささやかな炎。何も燃せず、暖められず、照らし出せず、そこにあるだけだ。それが無数に群れると、渦となり、川をなし、轟きながら地表を焼き尽くす。
どちらが強者でどちらが弱者か。比べるまでもなく。二つのフレームは、地上を気ままに隔て、焼き尽くす。
「そろそろ……かな?」
(2)青い冬
冬が青いと思ったのはいつからだろうか。雪のない暖地では、冬が白くなることなんかない。
街のあちこちで年末を彩るイルミが輝くようになる度に、その中の青だけがわたしに入り込み、わたしをくまなく染めるようになる。
冬に色がないなんてことはない。決してない。だけど自分の中に残る色が青だけだと、指先だけでなく心の底からかじかんでくる。
ああ、違うね。青が寒いんじゃない。寒い自分が心底青いんだ。
目の底に少しずつきしきしと溜まっていく青を掻き分けながら、そんなことを考えたりする。
「ごめん、待った?」
「いや、私も今来たとこだよ。何、見てたん?」
「ああ、青」
【 了 】
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