第十九話 さざ波

「お姉ちゃんの彼氏ってさ?」

「んー?」

「なんか、わがままーな感じがすんだけど、お姉ちゃん付いてけるの?」

「んー、分かんないー。まだ付き合い始めたばっかだしー」

「のんきだねー」

「うぶー。言うなー。とろとろのわたしがこれ逃したら、もう一生ちゃんすないような気がしてさー。疑似体験だけでもしときたいー」

「ちょっとぉ、そんな理由でおっけー出したの?」

「いやー、そんなこともないけどさー」

「……」

「なにー?」

「じゃあ、わたしが……盗ってもいいの?」

「んんー? いいよー。そん時はそん時だー」

「お姉ちゃんてさ」

「んー?」

「時々、まじめなんだか、不まじめなんだか分かんないね」

「えー? わたしはまじめだよぉ。ただとろいだけでー」

「とろすぎだよ」

「しゃあないやん。どうしようか考えてるうちに、みーんなわたし追い越して行っちゃうんだもん」

「……」

「だから、あんたもわたしの後ろにくっついてないで、さっさと行っちゃっていいよー」

「お姉ちゃんっ!」

「はははー」


◇ ◇ ◇


 心に小さなさざ波が立つ。


 響き合う。


 打ち消し合う。


 そして。


 ぐ。



【 了 】

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