すべてを包んで温める炎のような赤い髪の娘と、
翼のない黒龍の刺青を持つ誇り高き黒髪の戦士。
大切な者に死なれ、独りぼっちとなった二人は、
運命に引き合わされ、魂の伴侶として愛し合う。
聖なるもの、魔であるもの、妖へと堕ちたもの、
そして、弱くしたたかで狡猾で愚かな人間達が、
それぞれのさだめを負って、生きて死んでいく。
時としてあまりに容赦のない幻想異郷の群像劇。
赤い髪の治癒師ファランと黒龍の傭兵シグリド、
恋人同士の二人がじっくりと描かれるのは勿論、
脇を固めるキャラクター達がまた魅力的である。
語り部パルヴィーズと養父アスランが好きです。
壮大にして繊細な物語は、歴史のわずか一幕で、
永遠の命を持つ者達の目には儚く映るのだろう。
終わりある命の生き様は悲しくも美しく愛しい。
めぐり旅する魂の物語、堪能させて頂きました。
人や妖魔の、様々な「愛」が絡み合う群像劇。言葉のひとつひとつを噛みしめるようにじっくりと味わいたい作品です。
丁寧に練り上げられた言葉によって紡ぎ出された物語は、華麗で重厚、なのに読みやすい。読み始めると一気にその緻密で美しい世界に引き込まれ、画面を閉じた後もしばらくは、どっしりとした充実感に浸ってしまいます。
傭兵のシグリドと治癒師のファランの恋が軸となって物語は進みますが、彼らは勿論、取り巻くすべての者の人生に、想いに、奥行きがあります。
彼らの人生や、心に抱く想いは、必ずしも幸せに満ちたものではありません。ですが、ダークな世界の中にあるほのかなともしびが、読後、不思議なあたたかさに包んでくれます。
ジャンルは「異世界ファンタジー」となっていますが、甘い「恋愛」作品でもあります。
どちらがお好きな方でも。
心の中に残る、切なく悲しいのに甘くあたたかな余韻を、今でも味わっています。