Extra.2 銀のFantasy*涼香視点
Act.1
※ちょっと幻想風味な話です。
長かった二学期も終わり、やっと冬休みが訪れた。
明日はクリスマス・イヴ。
でも、恋人なんていない私にとっては無縁のイベントだ。
気晴らしのつもりで私はひとりで街に繰り出したものの、それがそもそも間違いだった。
ど派手な装飾で施された街中を歩く男女のカップル。
一組二組ならばさほど気にもならないのだけど、まるで湧いて出たようにあちこちで目に付くから困る。
「ウザ……」
ざわめきの中に消えてしまうほどの小声で、私はぼやいた。
どちらかと言うとサバサバした付き合い方が好きな私は、男女構わず、ベッタリしているのが鬱陶しくて堪らない。
ただ、傍から見ると、私も紫織にしつこく付き纏っているように思えるのだろうけど、それでも、ある程度の距離は置いているつもりだ。
――今頃どうしてんだか……
昨日、学校で逢ったばかりなのに、不意に紫織のことを考えてしまう。
ひとりでいるといつもこんな感じだ。
入学当初は、ただ大人しそうな印象が強くてあまり好きではなかったはずなのだけど、気が付くと、何故か気になる存在になっていた。
もちろん、変な意味でではなく、何となく、親しくなりたい、と心のどこかで思うようになっていた。
勇気を振り絞って声をかけた時の緊張感は、未だに忘れられない。
そして、私に話しかけられた時の紫織の驚いた表情も。
それからは、往年の友のように付き合うようになっていた。
最初は遠慮がちだった紫織も、慣れてくると私にも容赦なく突っ込みを入れてくるようになった。
ボケているようでも、なかなか鋭い面があるので、私も時々ドキリとさせられた。
そんなおり、紫織の幼なじみである高沢朋也の存在も知ることとなった。
身長が高い上、わりと整った顔立ちをしているので、どこにいてもよく目立っていた。
また、人懐っこさもあるから、彼の周りには常に人が絶えない。
でも、そんな友人達と戯れていても、高沢の目は常に紫織を追っていた。
紫織同様、本当に分かりやすい。
そんな男に、私はいつから恋心を抱くようになっていたのか。
笑われるかもしれないけど、きっと一目惚れだったのだと私は思っている。
高沢のあの笑顔は反則だ。
例え、私に向けられたものではなくても、紫織だけのものだとしても、一度目にしてしまったら、ずっと頭にこびり付いて離れない。
中学を卒業するまでは恋なんてものに縁が全くなかったから、よけいに戸惑いが大きかった。
――笑っちゃうわ……
私はひたすら歩きながら、苦笑いを浮かべた。
ひとりで笑っている姿なんて、傍から見たら気色悪いかもしれないけど。
と、その時だった。
ふと、何気なく空を見上げたら、キラリと光るものが目に飛び込んできた。
――な、何……?
私は怪訝に思いながら目を凝らすも、あまりに距離があり過ぎて、その正体を見極めることが出来ない。
そう思っている間にも、光る物体はゆっくりと下へと落ちてゆく。
私の足は、無意識にそれへ向かっていた。
どこへ落ちたのかは分からない。
それでも、光の正体を知りたいと思い、人混みを掻き分けながら駆け出した。
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