第2話「異世界での生活」31
二手に分かれて探す。というのも考えてはみたのだが、やはり内容が分からなければどうしようもない事に気付いた昴。手に取って捲ってみるも大量にある謎の図形と記号に頭を痛めてしまう。故にレイセスに付き添うような形で適当に書籍の類を持ち上げて戻すという作業。何ら貢献していない。言うならば多少整理整頓しているような感覚になるだけである。
(あ、俺なにもしてねえ……これは図鑑か何かかな。面白そう)
最早自分の力で何かを見つけようという意思は無いのだろうか。偶然手にした一冊の本。そこに描かれているのは何やらどぎつい色をした謎の植物や、恐竜にも似た謎の生物。これが漫画には見えない。絵の下や横に補足説明のような文章が記されているのだ。
「なにマジでこんなの生息してんの? 外怖過ぎ……」
図鑑、なのだろう。これは何かに使えるかもしれないと鞄の中へ放り込む。しかしあのようなファンタジーな、所謂モンスターと呼ぶべき存在がこの世界に存在しているとは。否、言う程可笑しな話ではないのかもしれない。何と言ってもここは“異世界”なのだから。魔法があって人外も居て、それがこの世界の当たり前。ここで愚痴を漏らしていても変わらない。受け入れ難いのは事実だが。
「なあレイ、そっちはどんなのが……ってどうしたんだ?」
昴が声を掛けると驚いたように体全体を大きく跳ね上がらせ、急いで昴の背中側へ。抱き付くような形になっているので昴としては穏やかな気持ちではない。驚きやら嬉しいやら。正直者である。
「お、おい……!?」
「あの、あれ……なんですか……!」
抱き付きながらも片方の手で指差したレイセス。恐る恐る昴もそこに視線を投げる。まさか犯人でも見付けたのかと。
「……!」
同じように昴も驚いてしまうようなものがそこにはあった。積まれた書籍と壁の間。その隙間から見えるものは、余程の人間でなければ驚かずに通る事は不可能だろう。しかし固まっても居られない。もしかしたらそう見えるだけで何か別のものなのかもしれない、と昴は生唾を呑み込んでゆっくりと近付く。
遅れて進もうとしたレイセスが自分の行動に気付いたのかパッと手を離しその後を。
「……人の足、だよな」
距離を詰めたお陰で正体がはっきりと分かる。天に向けられた黒い革靴。そこから伸びる真っ白なすらりとした人間の足。動く気配は無い。物音を立てないように本の上から覗くと頭から膝の辺りまで布のようなものが被せられている。
それはまるで死体のようで、とてつもなく不気味だ。そっと書籍の群れを片付け、布に手を伸ばす。掴んだ。意外と手触りの良い布だったが、そのような事を気にして入られない。もし怪我人やその類なのだとしたら急を要するのだから。
「い、いくぞ――」
一息に。被せられている布を取り払う。
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