オンラインゲーム(とお酒)が好きな作家が『小説家になって億を稼ごう』を読んで思ったこと

こんにちは、埴輪です!


先日、Twitterで見かけて気になった本が手に入ったので、早速読んで見ました!


『小説家になって億を稼ごう』松岡圭祐 新潮新書


もちろん、「こうすれば小説家になって億を稼げるようになるぞ!」という内容ではなく、「小説家になって億を稼ぎませんか?」といういざないと言いますか、「小説家になれば億を稼ぐこともできますよ!」という証明と言いますか、実際に小説家になって億を稼いでる方が、小説家になって億を稼ぐために必要なこと、そして注意点を教えてくれる……そんな内容でした。


私のように、小説家として生計を立てるという段階に至らない作家にとっては、まだ見ぬ先の世界を垣間見ることができるだけでなく、いずれ自身がそうなった時に必要となる、知っておいた方が良い知識が綴られておりますので、小説家として生きていきたいと考えている方、また、今まさに小説家として生きていこうとしている方には、大いに役立つ一冊だと思います!


本書を読んで改めて実感したのは、「小説家は個人事業主である」ということと、「自分が面白いと思うものを追求した先に、面白い作品がある」ということです。


「小説のコンテストで大賞を取って、作品が書籍化! そしてプロデビュー!」……というイメージで小説家を目指している方は少なくないと思いますが、「その後」をイメージしている方は、あまり多くないのではないかと思います。


「出版社と契約して、ひたすら作品を書くだけさ!」……と思っている方もいるかと思いますし、それも間違いではないのですが、どの出版社と、どのような契約を交わすかは、小説家自身の責任で行うべきことで、「いやいや、それは全て出版社様にお任せします!」となると、とんでもない契約を交わされてしまい、結果、せっかく小説家になったのに儲からない、小説だけでは食べていけない……ということにもなりかねません。


つまり、小説を書くことはもちろん、それ以外にも自身が表立ってやらなければならないことが数多く存在するため、社会人として生きていくという点においては、他の仕事を選んだ場合と、何ら変わることはありません。(税理士を雇える稼ぎがない場合は、確定申告も自分で行うことになりますので、小説は書けるけるけれど、そうした手続きはできないと尻込みしてしまう方は、小説家として生きていくことは難しいかもしれません)


「そんな先のことより、コンテストで大賞を取ったり、小説投稿サイトのランキングの上位になる作品を書くためには、どうしたらいいんだよ!」……という心の叫びに対しても、本書はちゃんと『想造』という言葉で答えを用意してありますし、『想造』の概念を私流にまとめると、「自分が面白いと思うものを追求した先に、面白い作品がある」ということになります。


本書に『想造』の手順についても具体的に記載されておりますが、手順や方法はどうあれ、自分が面白いと思うものを追求した作品が面白い作品となり、それがコンテストで大賞を取ったり、小説投稿サイトのランキング上位になったりするという考え方は、一見すると理想論、ともすれば願い、希望、祈りのようにすら感じますが、10年以上に渡り、20作以上の作品を書き続けているものの、応募しては落選し、投稿しては埋もれる一方の私をしても、それが真理であると再認識し、腑に落ちたことが、私が本書を読んで一番良かったことだと思います!


他にも本書には見所が盛り沢山ですが、中でも私の印象に残った2点について、引用を交えてご紹介したいと思います!


1点目は、自費出版についてです。


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 ベストセラー作家への道に自費出版は不要

 自費出版は止めも勧めもしませんが、儲かる作家になるつもりなら関わる必要はありません。貴方は小説で儲けようとしているのですから、余計な経費をかけてはなりません。数百万を払ったところで、本当に出版社が商業出版としてデビューさせてくれるレベルの営業や流通、宣伝、販売は期待できません。書店での平積みなど夢のまた夢、いちおう棚差しで一冊置かれたという結果が待つのみです。(『小説家になって億を稼ごう』松岡圭祐、新潮社、2021年3月20日発行、P93-P94)

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自費出版と商業出版では、書籍化という結果は同じでも、その前後が大違いですし、小説家を目指す方が求めている書籍化は、後者のはずです。


ただ、書籍化に執着してしまうと、「書籍化すればどうにかなる!」という誘惑に抗えず、そのためなら数百万円すら安く思えてしまうこともあるかもしれません。


ただ、自費出版における小説家の立場はあくまでお客様であり、出版にかかるもろもろは全てサービスとなります。


なぜなら、出版費用を支払うのは、他ならぬ小説家自身だからです。


一方、商業出版における小説家の立場はビジネスパートナーですから、小説家は小説を書くだけでよく、小説家自身が出版費用を負担することはありません。


以下は本書でも言及されておりますが、自費出版で数十万のベストセラーになるような小説は、商業出版だったとしても売れたはずで、小説家が自費出版を選択してしまったにすぎません。


また、全ての出版社に書籍化を断られた作品であっても、今はKDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)という手がありますので、かつて自費出版を検討し、お金がないというこれ以上無い理由から断念した過去を持ち、実際にKDPで作品を販売している私からも、自費出版は不要であるとうことを、全力で申し上げたいと思います!


2点目は、小説家を目指す人が必ず直面する問題についてです。


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 他の作家とは比較せず、ライバルは常に自分だと思ってください。小説は一定のボーダーライン以上なら合格というものではありません。「あんな作品が出版されているのに、なぜ私のが出版されてないんだ」と嘆いても無意味です。求められているのは、これまでにない、斬新で面白い小説です。それが人気を博し、よく売れて、初めて世間も認めてくれます。

 儲かる専業作家になる割合を計算するのも無駄な行為です。新人賞の受賞率が数パーセント以下と報じられていたとしても、貴方は宝くじを買うわけではありません。貴方ならではの作品を、充分に時間をかけて生み出したうえで応募できるのです。上位の数パーセントに貴方が入ればいいだけの話です。貴方の『想造』した物語の持つ可能性は、他の誰にも否定できません。(『小説家になって億を稼ごう』松岡圭祐、新潮社、2021年3月20日発行、P69-P70)

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本書を読み終えて、私は自分の作品に誇りを持つ大切さを、改めて実感することができました。


書く作品、書く作品が日の目を見ないということが続くと、「どうせ自分の作品なんて……」と卑屈になってしまいがちですが、自分の作品は、他の人には絶対に書けない、オンリーワンであることは間違いありませんし、その価値もまた、他の誰にも否定できるものではありません。


そんな価値のある作品ですから、「どんな出版社でも、どんな条件でも、いや、むしろお金を払ってでもいいから、とにかく出版して欲しい!」……とは、決してならないはずです。


だからといって、適当に、何となく、こんな感じでいいかといった作品に、多くの人が価値を認めてくれるはずもありませんから、小説家が出来ることは、ただひたすら、自分が本当に面白いと思う、そう信じられる作品を書き続けることだけですし、私もまた、一人の小説家として、そんな作品を書き続けたいと思いますし、億を稼げるようになりたいとも思います!


ともあれ、本書に興味を持たれた方は、ぜひ一読をお勧めします!



-追伸-


本書に一カ所だけ、私がどうしても納得できない一文があります。


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 オンラインゲームに興じるぐらいなら、その時間を『想造』にまわしましょう。(『小説家になって億を稼ごう』松岡圭祐、新潮社、2021年3月20日発行、P34)

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……オンラインゲーム歴が執筆歴よりも長い私にとっては、「私信か?」と勘ぐりたくなるぐらい、ダイレクトヒットした一文ですが、オンラインゲームに限らず、ゲームをしている時間が無駄であるとか、ただの暇潰しだとかという話はよく目にしますし、また、そういうことを言っている人が、世間的に成功している一方で、私は世間的には鳴かず飛ばずの落伍者であり、皮肉にも、私自身が動かぬ証拠となっているわけですが、それをなんとか覆したい……つまり、「プロの小説家になれたのは、ゲームのお陰です!」と公言することが、長年抱いている私の野望なのですが、それを実現させるためにも、「他の作家とは比較せず」、マイペースで頑張っていきたいと思いますので、末永く応援をよろしくお願い致します!


……あと、お酒に関しても否定的でしたが、私はお酒も楽しみつつ執筆を頑張ります!


……私の生き様を見て、オンラインゲームとお酒を止める方が現れないことを願いつつ。

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