「鬼滅の刃」の希望 ~全23巻を読んで~
※本近況ノートは「鬼滅の刃」のネタバレも含みますので、閲覧にはご注意ください!
おはようございます、埴輪です!
最終巻の発売日に合わせて「鬼滅の刃」全23巻(電子書籍版)を購入し、昨日、約8時間かけて読了しました!
感想は「面白かった!」の一言ですが、「それは作家としてどうなの?」という気もする一方で、面白さの秘密や、大ヒットの理由を解き明かす……などと、おこがましいことはとても言えませんし、何より、それは野暮というものですので、ここでは私が「鬼滅の刃」を読了して感じたことを、率直に述べさせて頂きたいと思います!
それは、「必ず完結させるという意志と覚悟のある作品」だったということです。
……何を当たり前なと思われるかもしれませんが、人気の作品が完結することなく延々と巻を重ね続ける、あるいは、完結したと思ったらその先があった……ということは、漫画に限らずよくあることだと思いますし、そんな中、人気の絶頂で完結を迎えた「鬼滅の刃」は希有な作品であると言えることから、そうした潔さが期待できる──ちゃんと完結してくれる──作品であったことが、これほどの人気につながったのではないかとすら思えます。(先に野暮だと書いておきながら、早々に書いてしまう野暮な私であった)
「鬼滅の刃」の目的=主人公である
それら二つの目的が達成された時が「鬼滅の刃」の終わりであり、実際、そうなりましたが、逆に言えば、その二つの目的が達成されない限り、あるいは、新たな目的が追加される限り、「鬼滅の刃」は連載の続行も可能で、人気作品であればあるほど、そうなる可能性も高まります。
それは単に作り手の都合……という訳ではなく、読者からのもっとこの作品を読みたい、世界観に浸っていたいという要望、需要もあるわけですから、容易に終わらせることもできません。
それでも、「鬼滅の刃」は長期連載から完結に舵切りするために、作中で大きく二つのテコ入れがあったのではないかと、私は考えています。
一つ目のテコ入れは、「下弦の鬼の解体」です。
「鬼滅の刃」に登場する鬼の中でも、特別な存在である
首魁である無惨を倒す前に、上弦六体、下弦六体、合わせて十二体の鬼を倒すことになる……はずでしたが、実際はその存在が明らかになり、下弦の伍・
累との戦いだけでも、単行本にして約二巻分を費やしているので、単純に計算すると下弦の鬼を倒すだけでも約十巻が必要となり、さらに上弦の鬼が……となると、それだけでも長期連載となってしまうため、下弦の壱・
もちろん、最初から解体を前提に登場させたという可能性もありますが、
二つ目のテコ入れは、「鬼舞辻無惨と産屋敷耀哉の邂逅」です。
禰豆子が太陽を克服したことで、物語が大きく進展します。
本編にも「禰豆子を巡ってこれまで以上に苛烈で大きな戦いが始まるだろう」とも記載されていいますが、実際には前述の通り無惨と耀哉の邂逅があり、そこからは最後まで最終決戦の模様が描かれることになります。(残された上弦の鬼との戦いも、最終決戦の一部です。)
これは余命幾ばくも無い耀哉が、自身を囮に使った無惨を倒すための戦略でしたが、正直、急展開過ぎると言わざるを得ず、作中に描ききれなかったため、単行本で補完されることになった設定も増えてきたことから、強引に、終わりへ向かっているという印象を受けました。
それと同時に、これはやもすれば長期連載になってまうところを、敢えて最終決戦という引くに引けない状況へ追い込み、作品を完結へと至らせようという背水の陣であり、なんとしても作品を完結させよう、それも、できるだけ早く……という強い意志と覚悟を、私は感じました。
なぜそれほど完結を急いだのか……真実は分かりませんが、視点をキャラクターに転じてみると、早期の完結は必然だったようにも思います。
なぜなら、炭治朗は禰豆子を一日でも早く人間に戻してやりたいと思っていたはずですし、無惨も自身が太陽を克服できる算段ができた以上、一日でも早く禰豆子を取り込みたいと思っていたはずですし、耀哉にしても自分の命を囮に使った戦略を実行するためには、一日でも早く無惨と会いたかったはずですし、それに向けて、準備も急がざるをえなかったはずです。
そんな状況の中で、延々と炭治朗が修行したり、上弦の鬼と一体ずつ戦ってしている時間はありませんし、そんな時間があったとしたら、それは全て嘘になってしまいます。
そうした嘘のない……もちろん、創作物なので、全ては嘘とも言えますが、登場するキャラクターが、全力を尽くし、傷つき、失いながらも、目的を達成する姿が、「鬼滅の刃」という作品の魅力であり、多くの人の共感を集めた理由なのではないかと思います。
現実の目的、その多くは達成して然るべきものです。
なぜなら、達成可能なことが目的に設定されることがほとんどだからです。
達成できそうもない目的は夢と呼ばれ、目的とされることはありません。
目的を決めたら、後それどうどう簡単に、効率よく達成できるかを調べるだけです。
膨大な情報の中から、どうすればいいかを調べる手段を、多くの人が有しているからです。
ただ、本来の目的というものは、そう簡単に達成できるものではありません。
簡単に達成できるものに、人は全力を尽くすことはないからです。
全力を尽くしても達成できないこともある……それが目的です。
「鬼滅の刃」には、目的を達成できた人もいれば、達成できなかった人もいます。
ただ、誰もが間違いなく、作品の中で生きていました。
生きようとしていました。
最期の最期まで、生きるという目的を果たそうとしていました。
──多くの人が自分の生き方を見直すことになったであろう、2020年。
その年に、別の世界へ逃げ出すような話でもなく、与えられた力で困難を解決するような話でもなく、自らを鍛え、諦めず、前に進み、目的を達成するような話が多くの人に受け入れられているという事実は、人間、まだまだ捨てたもんじゃないと思える出来事だったように思います!
【令和コソコソ噂話】
「鬼滅の刃」の作者「
ワニといえば今年、Twitterで注目を集めたワニがいましたが、それはともかく、単行本に寄せられているコメントの数々を拝見すると、気遣い、感謝、謙虚に溢れており、訂正、補足、謝罪などからも、誠実な人柄が感じられるものばかりで、こうした方の作品が報われるということもまた、世の中捨てたもんじゃないなと思えますし、私もこうありたいなと思います!
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