8日目 ~自分の積み重ねてきた引き出しの中~

こんにちは、埴輪です!


今日は良い天気……というわけで、久々に散歩をしてきました!

そして、久々の読書タイム。


このところ、気になってるのは「ハプスブルク家」。

名前は聞いたことがあるけれど、「有力な貴族なのかな?」ぐらいの認識しかなかったのですが……これがもう、とんでもありませんでした!


ハプスブルク家は十三世紀から二十世記初頭まで……約700年に渡ってしていた「王朝」だったのです!


その歴史を紐解いてみると、まさにファンタジーの世界と言いましょうか、「これぞ王国 or 帝国!」と言いましょうか……とても「ノンフィクション」だとは思えません!(古いエピソードの中には、真偽が不確かなものも存在しますが……!)


何しろ700年ですからね……果たして、近代国家がこれを越えられるのかどうか。


さらに、ハプスブルク家は「戦争」ではなく「結婚政策」によって領土を拡大していったというのが、現代社会へのアンチテーゼと言いましょうか……「懐古趣味」ではなく「温故知新」として、学ぶべきことも多いのではないかと思います!(「近親結婚」など、「反面教師」とすべき点も含めて)


ただ、私がハプスブルク家にハマったのは、ハプスブルク家以上に、本を書かれた著者「江村えむらひろし」さんの語り口が魅力的だったからではないかと思います!


とにかく「丁寧で分かりやすい」というだけではなく、ハプスブルク家の人々を様々なエピソードを交えながら、生き生きと描写する様は、まるで小説(伝記)を読んでいるかのような臨場感があり、とても面白く、親しみが持てました!


そのため、私は「ハプスブルク家について書かれた本」というより、「江村洋さんがハプスブルク家について書いた本」を読みたいと思うようになり、これがきっと「ファンになる」ということなのだろうと思います!


……思い起こせば、以前に近況ノートで紹介した「パスカル」や「セネカ」について書かれた本も、両名が残した言葉の素晴らしさに加え、それらについて本を書いた著者の筆力がなければ、それほど感銘を受けることもなかったかもしれません。


「あんなにつまらなかった英語の授業が、先生が替わっただけでこんなに楽しくなるなんて!」……みたいな経験を、誰しもしたことがあるのではないでしょうか?


「フィクション」に「ノンフィクション」、「ジャンル」などは関係なく、読者に面白いと思わせる力……それが、筆力なのかもしれません!


――でもって。


本日「とあるネット小説大賞」の一次選考通過作品が発表されました。

そこに添えられた「総評」はとても示唆に富んでおり、特に良いなと思った文章を以下に抜粋させて頂きます!


------------------------------------------------------------------------------------------------

『万人に好かれる小説』は理想ではありますが、『自分自身』を含めて読者のことをもっと意識した小説があっていいように思いました。コンテストである以上どうしても市場のことは意識しなければいけませんが、「単純に流行のみを意識して書く」とどうしても、途中で失速していく傾向があります。

小説に限らずクリエイティブ作品はどうしても自分の積み重ねてきた引き出しの中で勝負するしかない部分がございます。

作者自身が一人の読者として、単純に流行をなぞるだけではなく、どういった個性を出していけるのかを考えると作品にぐっと説得力が出ます。作品を読んでいて作者の方のこだわりを感じられる作品をぜひ世の中に送り出せればとコンテストとしては考えております。

------------------------------------------------------------------------------------------------


……理想と現実の差は、この際置いておきます。


「自分の積み重ねたきた引き出しの中」を充実させることは、ある意味では「その道の専門家になる」ことと等しいのではないかと思います。


そして、その領域まで達した人の文章は、まさにその人にしか書けない、魅力的なものになるのではないかと思います。


ただ、専門的な知識は一両日で身につくものではありません。


すぐに成果を出すためには、流行を追うことが一番かもしれませんが、それを追うばかりでは、本当の知識は身につくことがないと思います。(身につく前に変わってしまうのが流行なのですから)


それとは逆に、とことんまで突き詰めたものは、どんなに時代が変わろうと、決して色褪せることはありません。


私が最近ファンになった江村洋さんは、残念ながらご存命ではありません。

それでも、彼が書いた本は今でも読むことが出来ますし、ハプスブルク家について学ぼうと思った際には、その名を必ず目にすることになると思います。


……これは自戒の意味を込めて書かせて頂きますが、もし卑しくもプロの作家を目指そうというなら「自分は研究者じゃないから……」という逃げ口上を決して口にしてはならないと思いますし、それぐらいの引き出しがなければ、とてもプロとしてはやっていけないと思います。


だからといって「そんなの無理だ!」と諦めることなく、例えこの先何年、何十年かかろうとも、今からでも引き出しの中身を充実させていく……それが遠回りなようで、プロの作家としてやっていく一番の近道なのかもしれません!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る