蜘蛛の糸
蜘蛛を助けたというたった一度の善行でも、地獄から引き上げる動機になる。そう考えた釈尊は、極楽から一縷の蜘蛛の糸を垂らした。
沸騰する血の池で永劫に終わらぬ責め苦を受け、真っ赤に茹っていた罪人カンダタは、頭上にするすると降りてきた蜘蛛の糸を見てひどく警戒した。
「俺が前にこいつを登ろうとした時には、途中で糸が切れて落っこっちまった。茹でられるだけでもしんどいのに、突き落としまで責めに加えられたんじゃたまったもんじゃねえ」
一向に糸を登ってこないカンダタを見かねて、釈尊が声をかけた。
「この糸は極めて細いが、超合金製だ。イナバ物置よりタフさ。何人ぶらさがっても大丈夫だよ」
小躍りしたカンダタは他の大勢の罪人とともに極楽浄土を目指し、蜘蛛の糸をひたすら登り詰めていった。
もう少しで極楽にたどり着くというその時、尻から糸を垂らしている蜘蛛の姿を認めたカンダタは自ら糸を離し、再び血の池に落ちていった。
「象くらいでかいセアカゴケグモじゃねえか。俺たちゃ蜘蛛のエサかよ!」
【おしまい】
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