もう古い

(1)

「なんでも新しいものがいいっていうわけじゃない」

「そうだねえ」

「古いものには古いものなりに、価値も味もある」

「うんうん」

「ぬか漬けと女房は古い方がいいって言うじゃないか」

「古亭主と濡れ落ち葉には使い途がないけどねえ」


(2)

「エイジドという言い方がある」

「うん」

「すぐに消費しないで寝かしておけば、熟成が進んで美味くなる」

「ふうん」

「だから、もう少し寝かしといてくれ」

「生きながら腐れてるじゃん。サバ以下ね」


(3)

「別れたのは、恋が古臭く感じたからじゃない」

「そう?」

「ああ。恋は、思い出に下げた方がよく輝くんだ」

「目の前のあたしは、古くて輝かないってことね」

「いや……」

「いいけど、フレッシュな危機に備えたら? ぶっ殺してやるっ!」


(4)

「長いつきあいと古いつきあいとはちがうと思う」

「うん」

「ようちえんからずっとつきあってると、古いよな」

「ようちえんどころか、もっと前からだもん」

「ああ。そろそろリセットする?」

「てか、あたしたち小学校に入ったばかりでしょ。つきあってないし」



【おしまい】

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