毒でおま

「博士、白雪姫用の毒リンゴ、完成しましたか?」

「これはこれは王妃殿。出来ておりまする」

「おおっ! これですの。見た目はまんま青リンゴ」

「でございましょう?」

「ふふふ。やるわね。で、どのくらい毒が強いのです?」

「最強……と申したいところですが、王妃様自らが乗り込まれると聞いておりますゆえ、習慣性が出てじわじわ効くようにしてあります」

「ほほほ、時間は関係ないわ。最終的に効けばいいのよ」

「王妃様、しかもこれには、これまでにない素晴らしい特徴がございます」

「なんですの?」

「地球に優しいんです」

「エコなの? あまり白雪姫暗殺には関係ないわね」

「しかもです」

「まだあるの?」

「体にも優しいと、大人気商品なんです」

「ちょいと! なんで、本番前にそんな派手な真似するのよ! 白雪姫に警戒されたら元も子もないでしょう!」

「いえいえ、通販チャンネルで大人気の商品ですから、すぐに飛びつくことでしょう。今や半年待ちの品薄商品」

「な、なるほど。それをわたしが裏ルートで苦労して入手したと」

「感激した白雪姫は、疑いもせずにいちころ」

「ぬう、博士。おぬしも悪よのう」

「いえいえ、王妃様ほどではございません」

「なんか、むかつくー」



 ……つくつんてけてんてけとんつくつん♪



 数日後の早朝。七人の小人が、リビングで新聞を読んでおります。


「いけずの王妃が重体やて?」

「あほやのう。毒荏どくえの実は、油(桐油)採るもんや。毒あるんやから、そのまま食うたら、そらあ当たるがな」

「そない猛毒ってほどでもないんやろ? どんだけ食うたんやら。真性のあほやな」

「桐油が、溶剤フリーの健康にいい床塗装剤いうて売れてるさかい、食いもんと勘違いしたんちゃうか?」

「ぎゃはははは。どこまであほなんやろ」

「ほいで、白雪姫は?」

「床に桐油塗らせてる」

「そやなあ。見事に家事労働全滅やったからなあ。働かざるもの食うべからずや」

「毒食わすまでもないやろ。あの役立たず。王子も気の毒になあ」



【おしまい】

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