第5話 母、怒る

 2016年2月13日上毛新聞朝刊の誤報は、その日の朝のうちに母の耳に届いた。(幸いにも)我が家は上毛新聞をとっていなかったので、朝刊を読んだ母の友人伝いに情報が伝わってきたのである。


 火事の様子を知る母の友人は、すぐさまこのコラムが誤りだらけであることに気付いた。寝ぼけ眼で読んですぐにわかるほど、この記述は間違っていたということだろう。


 焼け出され、借家に住まう両親の様子を窺いに富岡に帰省していた私は、携帯電話越しに母が怒り始める現場に居合わせたのだが、帰宅の都合もあり顛末を知ることなく仮の実家を後にした。居住する神奈川の西端に帰ってから電話をかけると、母は上毛新聞の誤報に対して怒りの感情を露わにしていた。


 冒頭でも述べたが、母は、我が家を焼失に追い込んだk氏に対して怒りを見せるということはほとんどなかった。k氏が自らの過失で我が家を焼きながら、被害者面を突きとおしたことで、怒りを通り越して呆れてしまったからである。k氏のあまりの非道ぶりに対して感情が追い付かなかったようだ。


 しかし、上毛新聞の誤報には、どうやら母の精神も対応できたらしく、母は、上毛新聞に抗議を行うべく、およそ一月ぶりに自発的に人に連絡を取りはじめていた。

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