鉱脈


俺は鉄鋼会社につとめている。

ある日、うちのチームが大学と共同で海底を調査していると、センサーに巨大な反応が。

「教授、この反応は!?」

「こ、これは……信じられんほど大きな鉄の鋼脈だ。しかも異常な純度の高さだ。ほとんど精錬しなくてよいほどだ」


この鉄の鉱脈は海底のかなり深いところの、これまたさらに深い地下にあったので、巨大だが今まで知られていなかったのだ。

こんなに深いと20世紀の技術では掘削は無理だが、今の最新技術なら十分掘り出せる。


早速、わが社は鉄鉱石を掘り始めたが、何しろ公海上にある上、範囲が広大(地球を南北にわたり広がっていてどこまで続いているか不明なほどだ)な為、早速ライバルがイナゴのようにむらがってきた。

しかも鉄の鉱脈に並行して規模は小さいが金、銀、銅やレアメタルの鉱脈もこれも異常な純度で存在している事が判明し、競争に拍車をかけた。

その結果、あらゆる金属の相場は暴落し市場は大混乱に陥った。

だが、安い金属が世界中に浸透した結果、あらゆる産業の金属需要は激増し、ますます掘削量増加して行った。


「しかしすごい事になりましたね、教授。我々が発見した鉱脈のおかげで第何次だかの産業革命が起きたとのもっぱらの評判です。何しろ、工業製品の品質が格段にアップしましたからね。車も電車もチタン製、電子機器の配線も銅線だったのが軒並み金線を使い、工場でもプラチナの触媒を使い放題。材料を置き換えただけでどんな製品も軽くて丈夫、壊れにくくなってしまうんですからすごい」

「そうも喜んでいられんよ」

教授は浮かない顔だ。

「例えば世界各国で深刻な公害が発生している。金属工業、重工業が盛んになったからだが……懸念はそれだけじゃない」

教授が手元を操作すると、鉱山の様子がディスプレーに映し出された。

南北に、北は北極から南は南極まで何本も鉱脈が地球を取り囲むように存在している。

「……まるで、スイカの縞ですね」

「その通りだ。そもそもなんでこの鉱脈群こんな形をしているのかまだ判明していない。今、鉱脈の下はどれくらいまで深いのか調査中だが……」

その時、ブザーが鳴り響いた。教授は測定器のデータを画面に映し出した。

「なんと! この鉱脈の下は地表を越えてマントル層まで到達している!

これは大発見だ。いや、本当にそうだとすると……」

その時、高い音でブザーが鳴り始め部屋の電源が緊急用電源に切り替わった。直後、大きめの地震が起きた。

「最近、地震が多いですね。世界的にも増えているとか」

見ると教授はひどくあわてた様子で、助手達に指示を出し、あちこちに電話をかけ始めている。相手には政府関係者もいるようだ。

「一体、どうしたというのです……?」

「大変なことになった。君も手伝ってくれたまえ。我々が採掘しているこの鉱脈の構造は地球を覆ってマントルまで到達している。いわば地球を支えている『骨』なのだ!! 我々はそれに穴を開けたり、掘り出していたりしたのだ。早く世界中に警告しないとこのままでは地球がボロボロに……」

次の瞬間、一際大きく警告がなり、大きな揺れがきて室内は真っ暗になった。


(了)

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