未確認

何年か前の事だ。


はじめての山をハイキング中、足をすべらせて登山道より数mほど下の沢へ転落した。ケガはなかったが、目の前に洞窟があり、入り口に怪しい影。

なんと、毛むくじゃらの人間のような生き物……大人が二人、オスとメスのようだ……あと、子供が二人。

大人は不安そうに、子供は涙目で俺を見ている。

「ゆ、雪男っ!?」

でも、こんなふもとの登山道の近くで?? パニックになりかけつつ、あわてて逃げ出した所を、偶然通りがかった登山者達に沢から引っ張り上げられた。

「ば、バケモノだ!! 雪男が!早く警察に連絡……」

「いいから、落ち着け」「騒ぐな! 彼らがかわいそうだろ」

「え、あなたたち、何で……もしかしてアレを知ってるんですか!?」

「騒ぎたてたら、学者とかうるさいだろ! 俺は報道関係者だが、そうしたらマスコミも動かざるを得ない……」

「ええ!?、報道関係なのに雪男の存在を伝えないんですか??」

「正確には雪男ではなく、『ヒバゴン』だ。この山の常連の登山者なら誰でも知ってる。みんな、見なかった事にしているんだ。……そっちの方が彼らも幸せなんだ。あんたも誰にも言うなよ」

あまりのことに呆然としていると、登山者達は行ってしまった。

下の沢にもあの怪物の気配はもうない。さっきの騒ぎの間に逃げたようだ。

俺はそのまま道を引き返す事にした。


それ以来、TVのUMA(未確認生物)特集などを見るたび思うのだ。

彼らが発見されないのは……つまり、こういう事なのだな、と。



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