不死の終わり10

 つまりはそう、最初からすべての準備は整っていたのである。

「準備も整ったことだし、さっそく実行してみようか」

 全員家の前の広場に出る。私は冥界から死神の鎌を呼び出し、ファボスに渡す。

「さて、リベル。貴様との長き因縁に俺の手で幕を下ろせることを喜ばしく思う。さらばだ」

 ファボスが握ると小さく見える、死神の鎌が振りかぶられ、柄で横なぎにリベルの胴を打ち抜く。リベルの体はそのとんでもない威力に吹き飛び、足首より上が消滅した。

先生の言ったように、魂の枠を破壊してしまったのならば、リベルの魂は飛散し、そこらの生物に吸収されてしまうのだろう。最悪の不死者と称された書物の神、リベルの終わりとしてはあっけないものと――、

「まだ死んでないんだけど、どういうことだい?」

ならなかった。

「おっかしいねぇ?」

 先生が呟く。本当におかしいですよねぇ、何回、確実に殺せるって方法が失敗するんですか。

「あんた、本当に死ぬ気あるのかい?一応、原初神族は魂の枠が壊されても、死ぬ気がないうちは、自分の意志で魂を維持できるとはいえ、あんたは死ぬ気なんだろう?」

「死ぬ気がないわけないだろう?そもそも、魂の枠すら壊されていない」

 全員が原因を模索するように考え込む。

「あ」私は思い当たりましたよ。

「たぶん、ファボスが死神じゃないからですよ。前にもリベルに死神の鎌を貸したら使えませんでしたし」

「でもあれは刃の話だろう?」

「まぁ、刃でも柄でも、それに込められた力を使うのに死神でなければならないのかもしれないね」

「じゃあどうするんですか?この場で鎌を使えるのは私と先生だけですよね?先生、リベルの魂を砕けるだけの力出せます?」

「無理だね。できてたらそもそも、あんな道具を使ったりしてないよ」

「それもそうですねぇ」

 どうしたもんでしょうか。

「そんなもの、答えは一つしかないだろう?」

「なんです?ファボスが死神になるんですか?」

「違う違う、それはだな?」

 ファボスがアイデアを披露する。

「絶対に無理ですって!!」

「いや、いいアイデアなんじゃないか?」

「これなら確かにすべての問題をクリアーしていると言ってもいいだろう」

「問題ないわねぇ?」

 反対は私だけです。それもそのはず、ファボスが提案した作戦というのは、「死神の鎌を握った私をファボスが握り、思いっきりリベルに叩き付ける」というもの。反対するのも当然でしょう、むしろなんで私以外は賛成できるんでしょうか。

「大丈夫だよテロリカ。だって、ファボスは決意の書に縛られているから、僕を殺すための行動で君が傷つくことはないからね」

はははと笑いながらリベルは言ってくる。

「それは、そうですけど!」

「この場では賛成の方が多い、この作戦で行くぞ」

 問答無用とばかりに私を死神の鎌ごと握りこむ。器用にも、私の手に死神の鎌がしっかりと握りこまれるように握ってくる。

「さぁ、これで最後だ。言い残すことは何もないな!!!!死ねぇ!!!!」

 そしてそのままファボスはさっきの鎌を握っているだけの時と同じようにまったく遠慮なく、私を振りかぶり、リベルに向けて叩き付けました。

「きゃあああああああああ!!!!!」

 私は悲鳴を上げながら、まったく抵抗することもできずにリベルに向けて高速で叩き付けられ、意識を失った。


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