大図書館2

 ここがどこかわからないとかそういう問題ではなく、そもそも、どこへ向かえばいいのか、どこから来たのか、何にもわからない状態です。

 これは、迷路です。図書館ではありません。

 しかし慌てることはありません。私には、沢山の死神の道具がついているのですから。人を探すことのできる道具も当然資料には載ってます。

 早速、探し人のところまで案内してくれる道具を念じて、冥界から取り寄せようとする。が、一向に手の中に現れない。

 試しに、今まで使えた道具を適当に出そうとしてみるがどれも反応なし。

 これは、もしかして、天界には冥界から直に道具を取り寄せることができない?

 非常にまずくないですか?

 今手元にあるのは、最近使ってまだ返してない少数の道具だけです。あんまり迷宮で役に立つ類の道具は持ってなかった気がする。

「なあ小娘、適当にこの本棚をぶち抜くわけにはいかんのか?」

「やってみます?」

 もう、これしか方法が無い気がします。死神の道具が使えない状態で、迷宮の中で迷っている、そんな状況ならば、これも仕方ないことなのです。ごめんなさいね、リベルティ。でもたぶん、ファボスではこの本棚を壊すことは無理ですけどね。

 短く息を吐いて、ファボスが本棚を思いっきり殴る、がビクともしない。

 それもファボスがここにきているというのが、リベルを殺すことの一環。その状態ではファボスはリベル以外の物を害することができないというのが、決意の書に書き込まれたファボスを縛るルールだ。

「チィ、煩わしい。どうにかならんのかこれは」

「今の私たちの装備じゃどうにもなりませんね。本棚を壊すことは諦めて、先へ進みましょう、適当に歩いていれば、いずれリベルのところにたどり着くでしょうし」


 結論から言えば、その見通しは甘かった。途中見つけた、図書館の大きさ、蔵書数を表示しているプレートによれば、この図書館の大きさはおおよそ、八千万平方キロメートル。これは私達が住んでいた村がある王国の一万倍程の広さで、更にそれが上下に延びているのだ。地図もなしに歩いて探せる広さじゃない。いや、地図があっても無理でしょう。

 幸いに、私達は食事が必須ではない身なので大丈夫ですけど、万が一、この図書館に普通の人間が迷い込んだら絶対に生きては出られないでしょうね。

 単純に広さだけでも諦めたくなるようなことなのに、更に恐ろしいのは、そのプレートの値が見ている間にも徐々に大きくなっているということ。

 それは、つまり、この図書館は今の間にも大きく、成長しているということです。

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