天界8

「とりあえず、だいたい準備もできたので、トラトを呼んで天界に向かいましょう」

 持っていた天命の契約書を取り出し、空いている欄にサインを書き入れる。

「呼ばれて飛び出てトラトちゃんやで!ってうぉええええええええええ」

 その瞬間を待ってましたとばかりにトラトが現れ、突然吐き出した。

 そういえば天界生まれの神族の人には魔界の空気って毒になるんでしたっけ。トラトはリベルと違って不死でないので、まずいのでは?

「こいつはいかんな、しっかりつかまってろよ?」と、ファボスが私とトラトを掴み、来た時と同じように思いっきり跳んだ。魔界から急いで現世に行くのはわかるんだけど、もっと安全なやり方はないんでしょうか。あと、つかまってる余裕はあんまりないです、ファボスがしっかりと握ってくれているので、大丈夫でしょう。

 魔界の空を抜け、魔法陣を抜け、現世の空へ。そして私たちに全く衝撃が伝わってこない割に、派手な砂埃を巻き上げ巨大なクレーターを作りつつ着地。

「あー、すっきりした…………。なんてところで呼び出すんや…………」

「すいませんね。ちょっと忘れてまして」

「死ぬところやったんやで。うちはあのリベルと違って死ぬんやからな?」

 確かにリベルとばかり関わってきたから、他の人の死ぬラインがわからなくなってきたような気がする……?大丈夫だろうか。

「まぁええわ。うちを呼んだってことは天界に行くってことやんな?そっちの黒い人も一緒か?」

「ええ、一緒で」

「ああ、俺もリベルを殺しに行くつもりだからな」

「門をつなげる場所はリベルの城でええやんな?あの城馬鹿みたいに広いんやけど、大丈夫か?」

「そんなに広いんですか?」

「あの城は世界が生まれたときからの歴史、書物を全部詰め込んである図書館やからなぁ。だいたいこの大陸の広さぐらいやな」

 大陸の広さ……?そもそも大陸の広さがわからないですけど。かなり広いってことはわかりました。その中でリベルを見つけなければならないんですよね?

「案内とか、できます?」

「できんなぁ、うちもリベルの城には入ったことあらへんからな」

 うーん、これは、早まったのかもしれない。いや、アクシーさんからの情報はどうせ中からしか城を見ることはできないし、リベルのすぐ横からスタート。これでは内部の作りまではわからないだろう。今、出発しても、先延ばししても変わらないのだ。大丈夫なはず。

「まぁ、大丈夫でしょう。では天界へ出発です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る