勝負9

「さてさて、紹介も終わったことやし、実食の時間やで。二人ともよーく味わって、時間をかけて食べるんやで?」

 私の前にリベルの作った料理が運ばれてくる。いつもに増しておいしそうで、この料理が食べられるのはものすごい楽しみではあるけど、同じぐらい勝ち目がないって感じる。

 私にできるのは精いっぱい、我慢しながら食べるだけです。

 一方、リベルは運ばれてきたスープを見て、顔をしかめました。失礼ですね、気持ちはわかりますけど。私なら絶対に飲みませんけど。

 私も覚悟を決めて、一口食べる、なんていうか、一言で表現するならば。

「口の中が幸せに包まれていく」

 思わず声に出して言ってしまうほどおいしい。手が、スプーンが、次から次へと、料理を口に運ぶ、そして、あっという間に目の前の皿は空っぽになってしまった。正直、勝負関係なくもっと食べたいって感じですけど、こんなに早く食べてしまっては、私の負けが決まってしまったようなものですね。

 私は幸福感と敗北感の狭間でゆったりしていたのですが、リベルはまだスープとにらめっこをしていました。食べる時間は最初に口をつけた瞬間からカウントするらしいので、まだ負けが決まったわけではないです。

「なぁ、コントラ、僕は本当にこれを飲まなければいけないのかい?」

「うちのことはトラトってよんでほしぃなぁ?」

「すまないトラト。もう一度聞くが、僕は、本当にこれを飲まなければいけないのかい?」

「そやなぁ。飲まんかったら食べ終わるまでの時間は0秒ってことにして、テロリカちゃんの勝ちってことになってまうけど、それでええんやったらええで?」

 どうやら、このままリベルがあのスープを飲まなければ、私の勝ちになるみたいですね。

「僕は負けるわけにはいかない、今回ばかりは絶対にだ」

 リベルは自分に言い聞かせるように繰り返しつぶやき、深呼吸をする。過剰とも思えるほどの時間をかけて、心構えをしたリベルは、スープ皿を両手でつかみ、口をつけて一気に飲み干し、「しまった……」と呟きながら力尽きたように倒れた。

「えー、完食にかかった時間、テロリカちゃん、3分47秒、リベル10秒。とゆーわけで、リベルは気絶してまっとるけど、この勝負、テロリカちゃんの勝ちやな!」

 奇跡としか言いようがないですけど、この勝負、私の勝ちのようですね。これで、天界にも行けるし、リベルの秘密とやらも明らかになる。よかったよかった。

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