魔界6

 次の名所へ行きましょう。

「次はここよ」

案内された場所は崖、それも半端な高さではなく下にもやがかかるような高さの崖です。

「ここは見ての通り飛び降りる場所よ。下は海なんだけど、最近は波消しブロックをしいてあるからほぼ確実に死ぬわ」

「生き返るから意味がないのでは?」

「魂だけ吐き出すサメが下にいるのよ。肉体を魂ごと食べちゃって、魂だけ吐き出すの。食べた肉体は絶対に離さないって話よ」

「そんな都合のいいサメがいるんですか」

 本当に都合がいい。肉体から魂を切り離して吐き出すサメとか都合がよすぎる気がする。

「そういう風に作られた魔獣なのよ。昔はここから飛び降りて死に損なって無駄に苦しい思いをした悪魔がたくさんいたものだからね。波消しブロックが設置されたのも同じ理由よ」

「死ぬことを求める人がリベルの他にそんなにいたことにびっくりですよ」

「長命種はそういうもんなのよ」

 長く生きるとそういう風になってしまうんだろうか。やっぱり魂が歪むから?。

「そんなことより、早く飛びなさいよ」

 リベルはしり込みしている、もしかして高いところが怖いのだろうか。

「別に怖いわけじゃないけど」

 怖いんですね。せめて立って言ってくださいよ。

「じゃあさっさと飛んで見せてくださいよ」

 そうこうしていると、しびれを切らしたアクシーさんが、無言で力ないリベルを引きずって崖に向かって投げた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁあああああ!」

 情けない悲鳴を上げながら崖の下に落ちて行った。徐々に悲鳴は聞こえなくなり、リベルの姿も見えなくなった。


 しばらく見てると、下からふよふよと情けない音を立てて、魂だけになったリベルが上がってきた。魂だけになっても具合が悪そうだ。

 これは、リベル死んだんじゃないですか?任務完了なのでは?


 しかし考えが甘かった。魂だけだったリベルは徐々に濃くなり、失われていた肉体が徐々に湧き出てきて、体は再構築された。肉体がすべて消失しても復活できるとか、本当に生物なのかも怪しいですよね。

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