破壊神きたれり4

 暫く待っていると、リベルがやっと森の中から帰ってきました。

「テロリカ、それは……、アイギス、それも本物を超える複製品か」

「ええ。これを全力で殴っても壊せなければ諦めるかな、って」

「ということだ、ファボス。この盾を壊すことができなければ俺を殺すなんてできっこない、たまになら挑戦を受けてやるから今日は帰ってくれ」

「アイギス、といえば。不破不壊の盾か。いいだろう、俺の力試しにぶっ壊してやる」

 思ったより話が通じるタイプみたいですけど一応、保険も掛けましょう。

「あと、この本に「リベルを殺した後もこの世界を破壊しない」という内容を書いてください。さっきも約束してましたし、問題ないですよね」

 そう言って一冊の本を差し出す。ほとんどのページが白紙になっているこの本は「決意の書」この本に書き込んだ内容は、書き込んだ本人への絶対順守の呪いとなる。不可抗力で書いた約束事を破ってしまいそうになった場合、事実がねじ曲がり破れなかったことになるそうだ。

 本来は曲げるわけにはいかない決意をするときに使うものらしい。

契約にも使えるけど、他者ならば書き込んだ内容を消すことができるので、本来はこういう場合はあまり使われないらしい。

 つまり、これに「世界を壊さない」と書かせればファボスは絶対にこの世界を滅ぼすことができなくなるというわけ。

 意外にもファボスは素直に、「リベルを殺した後もこの世界を破壊しない」と荒々しい文字で書いた。

「これでいいな。全く、これに約束事を書かされるのは二度目だな」

「二度目?」

 さっきまでリベルに対して放っていた殺気は抑えられ、圧迫感も見た目以上の物は感じなくなっていました。

「そう、過去にも一度な」

 そう言ってファボスは決意の書をめくる。

 書の最初の方のページに「リベルと戦う際にリベル以外の物を破壊しない」とさっきも見た荒々しい文字で書いてあった。

「昔、この世界に来てそいつと戦った時に書かされた。戦うのはいいが物が壊れると仕事が増えて困るってな」

 どうりで、あれだけ破壊力がある攻撃をした割に周りに被害が出ないわけだ。実際、壊れたと言ってもいいのはリベルと戦う前に着地したときのクレーターだけだし。

 しかし、物が壊れると仕事が増えるってのはどういうことだろう。三万年前のリベルは戦った場所の保守点検係でもしていたんだろうか。

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