悪魔5
「と、いうわけで、あなたとリベルの間にある魂の所有権に関する契約を破棄させてほしいんですけど」
「いいわよ」
いいんだ。
「どうせ何時まで経ってもそいつは死なないんでしょ。契約の枠が無駄になるからさっさと解約してしまいたいぐらいね」
「悪魔主導なら簡単に契約を破棄することもできるんじゃないですか?」
「できるわよ、本来ならね」そう言って、アクシーさんは一枚の紙を取り出す。
「これがリベルとの契約の書類。普通ならこれを破るなり燃やすなりすれば契約は無効になるんだけど」
そういってアクシーさんは契約書を引き裂いた。が、契約書は引き裂かれたことなどなかったかのように傷一つない元の一枚の紙に戻ってしまった。
「というわけよ、元々不死だったらしいそいつの魂を写したこの紙もそいつと同じで不死不滅になってるのよね。全く、迷惑な話よ」
リベルの不死にはそんな力まであるんですか。使い方を考えればとても便利そうな力ですね。今は迷惑なだけですけど。
「それなら、この、どんな契約でも無効にできる『破約の書』を使って契約を破棄しましょう」
実際は同意などなくても、同じ空間内に契約者双方が存在すれば破約の書は完全に契約を破棄することができるが、同意が得られるならそれに越したことはない。
「いいですね?」
「ええ、いいわよ」
「僕もいいよ」
リベルには聞いていないが、両者の同意を得たところで破約の書を起動させる。
書が薄く発光し、すぐに光が消える。これだけで契約は白紙に戻ったはずだ。
「確かに、契約書は白紙になったわ。これであなたの魂はあなたの物よ」
契約書だったものを確認し、無事に契約が破棄されたことを確認した。
「この魂の写し紙は返すわね、絶対に消滅しないメモ帳として使えるわよ」
便利な紙をもらいました。しばらくは記念に取っておきましょうね。
「では、もう会うことはないと思いますが、さようなら、首筋が弱いアクシーさん」
「あんた、そういう余計なことを言うのやめなさいよ」
そう言って、アクシーさんは魔界へ帰っていきました。
数日後、まさか魂の写し紙に消えたはずの契約の文言が現れ、破約の書で破棄した契約までもがリベルの不死特性により復活してしまうことが分かり、アクシーさんとも長い付き合いになるなんてこの時は誰も考えてすらいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます