試行錯誤4

 朝食を食べた後、リベルは畑仕事の手伝いをすると出て行った。

 私はそれを姿を消す羽衣を纏い、こっそりと後をつけた。村長さんが言っていた、リベルが来てから随分と農作業が楽になったと。それは単純な労働力としてではなく、不死を利用した何らかの特殊な方法を使っているのだろう。そうでなければ、わざわざ言わないだろう。

 そうこうしている内に、リベルは畑に着き何やら話している。もう少し近づいてもばれないだろう。

「今日もお願いしますね」

「ああ、いいですよ。僕も皆さんのお役に立てるのは嬉しいですし、おいしい野菜もいただいていますしね」

「その野菜の美味しさは君が作っているようなものじゃないか」

 やはり、彼が何かをしているようです。あの野菜の美味しさは尋常ではありませんからね。

 見ていると突然リベルを取り囲んでいる人たちが農具を取り出し、リベルを殴り倒した。そのまま、農具でぐっちゃぐちゃになるまで殴り、抉り、かき混ぜ、畑に混ぜ込んだ。これはもしかして、リベルを肥料にしているのだろうか。

「うわぁ、もしかして朝の野菜もああやって育てたんでしょうかね」

 別に倫理とかどうこういうつもりはないですが、なかなかエグイことを平気でやるようです。あ、不死者は人間じゃないからいいのかも。

「やぁ、テロリカさんですか?そこにいるのは」

「ひぇ」

 突然後ろから話しかけられた、見えていないはずなのに。どうなっているんだこの人は。

「なんですか、村長さん。なんで見えてるんですか、あなた本当に人間ですか」

「ああ、その羽衣は使わない方がいい。姿は消えるが、空間が揺らめいて見えるからね」

 そんな欠点があったなんて、資料に書いておいてほしかった。

「それにしても、なんで昨日言ってくれなかったんですか。リベルがうちに住むってこと」

「ああ、君の家に住むことになったのかい?」

「え、村長さんも知らなかったんですか」

「そりゃあ、前の家がなくなって君の家になってたことを知ったのも昨日だからね。私の家に来るものだと思ってたんだけど」

 そうだったのか、今夜は追い出そう。そして森の肥やしにしてやろう。虫の餌だ。

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