試行錯誤3

「ところで、不死者リベル」

 先ほどから気になっていたことを聞くことにする。

「それは何をしているんですか」

「見ての通り、朝食の用意だけど?」

 今やテーブルの上には焼きたてのパン、みずみずしい野菜のサラダ、こんがり焼けたベーコンと、朝食三点セットが二人分並んでいた。

「それはわかりますが、あなた、食べるんですか?」

 不死者ならば、食事などとる必要もないだろう。食事をせずにいると死ぬのであればそれに越したことはない。

「いや、僕は生きるために食事をする必要はない。だけど、どの食事が最後になるかわからない身だからね。食事には気をつかい、いつ死んでもいいようにしているのさ。最後にアレが食べたいとか言って、死ぬ機会を逃すよりはいい」

 最後に食べたいって言い残して死ねばいいのに。

「それからテロリカ」

「なんです?」

「僕のことを呼ぶときにいちいち不死者とつけるのはやめた方がいい。僕の不死特性の一つに他者言及による不死というのがある。簡単に言えば、周りが僕を不死者だと言うことで僕の不死性が強固になるというものだ。これからはリベルと呼んでほしい」

「そうですか、ではリベル。これでいいですね」

「ああ、それでいい」

 他者言及の不死、これはまたどうにかする方法を考えた方がいいですね。私が不死者と呼ばないだけではあまり意味はなさそうな気がしますし。

「さて、食べようか。冷めてしまうよ」

「そうですね」

 食事が生きるために必須ではない不死者がつくる食事など、大したことはなさそうではあるが、見た目だけはとてもおいしそうだ。まずは一口。

「なっこれは!」

 めちゃくちゃおいしい。

「このサラダもパンもベーコンもすべてこの村で作られた野菜、小麦、豚から作ったんだ。僕もよく畑仕事を手伝っていて、この美味しさに貢献しているんだよ」

 不死者の作ったものだからといって、あまり差別するのはやめよう。

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