遭遇5

 不死者リベルを連れて家から出る。家の前は不自然に開けた場所になっていて大規模な魔法を使っても村の畑や建物に被害が出なさそうだ。

「テロリカ、っていったけ?君は本当に僕を殺してくれるのかい?」

「ええ、お望み通り殺してあげますよ。覚悟してください」

 とは言ったものの、まだ使える道具の説明もまともに読めていないし、勝算があるわけでもない。しかし、こいつだけは絶対にぶっ殺してやりたい。ありとあらゆる不死特性を持っていて、現状の死神が考え付く方法では殺せないのであれば、単純に不死特性を無効化する道具を使っただけでは殺せないのだろう。今、使える武器は学校でも使い方を習った、肉体と魂を切り離す能力を持った『死神の鎌』。

「まずは、あなたの不死を試させてもらいますよ」虚空に手をかざし、念じることで冥界より私の背より少々大きい刃を持つ無骨なデザインの死神の鎌を呼び出す。不死者リベルは多少期待外れといった顔をしているが、油断しているのだろう。そもそも死を望んですべての攻撃を受ける気でいる相手が油断していたからといってなんの意味もないような気がするが、今は好都合だ。

 構えた鎌を振りかぶり、棒立ちになっている不死者リベルに向かって振り下ろし、思いっきり柄の部分で頬をぶん殴った。

 無警戒であまり体に力を入れていなかった不死者リベルは吹っ飛び、こちらを見て何が起きたのかわからないという顔をしている。

 一応確認しておくが、死神の鎌の魂を切り離す効果を発揮するのは刃の部分だけである。しかし、私はあえて柄の部分で殴った。刃の部分は肉体や魂に傷や痛みを与えずに魂を切り離してしまうので、怒りをぶつけるには向いていない、だから柄で殴った。柄の部分には何も特殊な効果はなく純粋な殴打になるが、痛みが発生することを想定していなかった彼には良く効いたたようだ。

「驚いたでしょう、魂を切り離されると思ったでしょう、でも、今回はあなたを殺して魂を回収するのではなく、あなたへの怒りをぶつけることを優先させていただきます」と笑顔で語りかけ、歩み寄り、鎌を構えなおす。

「ああ、君は怒らせると怖いようだ。僕は死神に特殊な武器で幾度となく殺されてはこの姿で生き返ってきたが、単なる棒で殴ってきた死神は君が初めヘブゥ!」

 喋っている途中だったが、殴る。最初は呻いていたが、しばらく殴り続けていると静かになった。どうせすぐに生き返るとは思うが、家の裏の林に捨てておくことにする。

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