龍の王編:八

 再三のトラブルに見舞われつつも、なんとか『龍ノ王』の運営は続いた。プレイ開始から一ヶ月間、どうもサーバー間ネットワークにボトルネックがあるらしく、非常にゲームが重たい症状があったのだが、データセンターでハードウェアの定期チェックをしていたエンジニアが「ネットワークケーブルの配線間違っていたので、直しました~」という報告をしてきて数分後にスムーズにプレイできるようになった。

「この一ヶ月、配線疑わなかったの?」

「はい」

「最初の頃、重かったときハードウェアと結線全部見直せって言ったよね」

「はい」

 もはや、誰も、何も、愛着など無かったに違いない。そんな中、いよいよゲームアイテムに対して課金をすることになった。韓国の開発社から提示されたアイテムの価格は、いずれも数百円から数千円と高いものだった。中でも、アイテムをアップグレードするために必要となる「壺」はずっと使えるので、高くしてしまったほうがいいということだった。同様にゲーム内で消耗したり破壊されたりしないものは数千円にしても良いのだという。

 当初の触れ込みでは「ものちゅくり」が収益源となるということで、暴挙だと思いつつ、「壺」アイテムに一万円の値段を付けた。そして、壊れない上に強いパワーを持つ「ウェディングドレス」アイテムは六千円にした。そのほか、一時的なパワーアップなどは二時間で百円くらいの価格にしたり、壺と併せて使用する「粉」は三百円くらいにした。『龍ノ王』を紹介したゲームニュースサイトも「アイテムの価格が高すぎる」ようなことを書いていた。


 壊れないはずの「ウェディングドレス」は、アイテム課金二日目にして「六千円もしたのに壊れた」というクレームで問い合わせ担当に悲鳴を上げさせた。JにアイテムDBをいじって壊れないようにしろと伝えたが、もうJの目に生気は宿っていなかった。

 壺は一日に十二個くらい売れた。しかし壺を使うために毎回三百円の「粉」を使わなければならず、十個の粉を使っても武器がパワーアップしないというシビアな確率もあり「ツボツボ詐欺」と呼ばれた。

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