第82話 第四聖剣
「アハハハハ!!! いいですねぇ!! こんなに心踊る戦いは久しぶりですよ!!」
「そりゃ光栄だなッ!!!!」
アウリールと司は未だにCVAのみで打ち合っている。VAなどは使用していない。しかし、その戦闘の次元はすでに並のクリエイターのレベルを超えていた
打ち込むたびにカウンターが飛んでくる。それを躱してさらにカウンターを仕掛ける。互いに武器は軽量系。だからこそ、戦闘スピードはもはや視認するのも困難なほどになっていた。
知覚できるのは戦っている本人のみ。高次元で厳しい戦い。だが、二人はこの戦闘を楽しんでいた。久しぶりに出会った好敵手。その実力は自分と同等か、それ以上のもの。義務感ではなく、心の底から戦闘を楽しんでいる二人はどこまでも加速していく。
レイピアとフランベルジュが交錯するたびに甲高い音が室内に響き渡る。飛び散る火花が互いの顔を掠めるが、そんなことは気にしていられない。
今集中すべきことはこの相手を全身全霊を持って倒すこと。そう考えている二人はさらに戦闘スピードを上げる。
「いいですねぇ! さすが石川さんだ!! 世界大会の時よりも強くなっていますねぇ!!! アハハハハ!!!」
「戦闘中におしゃべりとは余裕だなッ!!」
「えぇ。余裕ですとも。私もあなたもまだ本気を出していないのですから」
「それもそうだなッ!!!」
司はこのままでは埒があかないと思い、
「――――
そう言うと司のCVAが微かに発光する。そして、CVAから生じている粒子が一気に収束し、その粒子が消えたと同時に高速の突きが繰りだされる。
狙いは必中、穿つは頭部。司は確実に殺すつもりで新月を放った。そして、本気で放たれた新月は難なくアウリールの頭部を貫く。彼はなんとか防御しようと試みたが、速すぎて目でとらえることは不可能だった。
右目から上は破壊されて血と
だが、アウリールは微笑む。にこりと笑うその顔は強がりなどには見えない。司はその姿に恐怖よりも疑問が先に生じる。
(こいつ、頭部を確実に貫いたのに……まるでダメージがねぇみたいだ……特殊なVAか? この手のタイプのやつは何か隠し玉があると思っていたが、こいつは予想以上だ……)
そう考えながら、バックステップで一旦距離を取る。一方のアウリールは嬉しそうに話し始めるのだった。
「流石ですねぇ……今の攻撃は避けることもできましたが、こうして見せておく方が効果的と思いまして……どうですか? 美しいでしょう?」
未だに血と脳漿は滴る。確実に即死させたと思っていた相手がこうして、普通に何事もなく会話をしている。異常な光景だが、司はいたって冷静にその言葉に応じるのだった。
「お前、干渉系のVAを持ってるな……それもかなり高位のやつだ……」
「おや? これは感覚系のVAかもしれませんよ?
「
司がそういうと、アウリールは再び微笑み髪についた血痕をポケットから取り出したハンカチで拭き始める。
「流石の洞察力ですね。普通はこんな光景を見れば多少は動揺するものですが、あなたは冷静に分析ができる。流石だ!!! 流石ですね、石川司!!! さてと、それじゃあ第二ラウンドに行きますか??」
そして、レイピアを顔の前で左右に振ると……
頭部の損傷していた部分が元通りになる。一瞬。本当に一瞬で修復されてしまった。
司は何が起きたか認識できなかった。人間の認知を超えた回復速度というのはありえないだろう。ならば、干渉系VAなのは間違いない。そう予想すると、再びフランベルジュを構える。
「そうだな。お前もそろそろ本気でこいよ? あっさり死なれるのは楽しくないからな」
「えぇ、もちろんですとも」
そして二人は再び戦闘を始めるのだった。
§ § §
「こりゃなかなかきついっすね!!!!」
朱音は一人でアウリールの部下と思われる二人と戦闘をしていた。彼のCVAは小太刀。小太刀は日本刀と対で発現される傾向にあるが、それはあくまで傾向。朱音のように小太刀が単体で発現することも稀にあるのだ。
長さは60センチ程度で、これをメインの武器とするのはかなり厳しい。リーチが長すぎるのも困りものだが、逆もまた然り。短すぎるリーチは必然的に相手に近づかなければいけない。だが、無用心に近づけば相手のカウンターをもらう可能性が高くなる。また、遠すぎては何もできない。
しかし、朱音は長年の訓練で
先ほどはそれを広範囲に使用していたが、戦闘に応用することも可能。
すでに相手の位置は全て捕捉済みなので、朱音は
「さぁ、いくっすよ!!!!!」
そして、そのまま相手に向かって
戦闘中のCVAの粒子を追うのは中々骨が折れる。感覚系VAは使い勝手が良いものが多いが、燃費が悪いのがネックなのだ。少しでも集中を切らせば性能を十分に引き出すことができない。朱音は飄々としながらも、本気で戦闘に取り組む。
「フッ!!!!」
相手の一人が日本刀のCVAを振るってくるが、それを難なく躱すとそのまま小太刀を相手の腹に叩き込もうとする。
しかし、それと同時にもう一人が後ろからバスタードソードを振りかぶっていた。確実にこのタイミングだと避けられない。
相手は自分の勝利を確信するも、すでに朱音の姿は目の前になかった。
「な………??」
そして、バスタードソードを振るっていた相手は地面に倒れていた。
これは物理的なスピードで行った訳ではない。
CVAは攻撃を行う際に粒子が収束する傾向がある。それを感じ取れる朱音は、攻撃を先読みできるのだ。また、粒子の動き方によって相手の攻撃も認識できる。視覚に入っていなくとも、自分の設定した領域内にあるCVAならば全てを把握できるのだ。
これが東城朱音の本領。
「あとは一人っすね!!」
そして、朱音はそのまま難なくもう一人の相手を倒すと、歩からもらったワイヤーの束を使用し相手を拘束するのだった。
「これで終わりっすね。それじゃあ合流しますか」
§ § §
「朱音! 終わったのか!!」
「えぇ。あそこに拘束しておきました」
朱音が合流すると、司はアウリールから距離を取る。司はほんのわずかだが、息が上がっており、肩で呼吸をし始めていた。
「それでどうなんすか? やっぱり強いんすか?」
「やつは干渉系VAを持っている。気をつけろよ」
「干渉系……それは厄介……」
そして、司と朱音がCVAを構えるとアウリールは上品に微笑むのだった。
「ふふ。そちらの長髪の方も中々強いようですね。私の部下はそれなりの手練れを選びましたが、残念ながら相手になりませんでしたか。これは楽しみですねぇ……」
「2対1だが、遠慮なくやらせてもらうぜ?」
「石川さんは律儀ですね。もちろんです。これはルール無用の殺し合いです。多勢に無勢など大いに結構。といっても、上に行ったお仲間はここまで来れるかは分かりませんが……」
「なんだと……?」
司は目を見開いてそう言うも、アウリールはそのまま淡々と事実を述べる。
「上にいるのはフォーサイス姉妹ですからね。そちらの七条兄妹もやるようですが、あの二人は
「歩の強さは俺ですら図ることはできないからな。それにしても、
「ご名答。そこで、私も改めて自己紹介をしましょう」
アウリールはCVAを解除すると、初めのように礼儀正しく頭を下げてこう言うのだった。
「私はアウリールローゼンベルク。
いつものように微笑むが、その顔は今までとは違い何か闇のようなものを感じる顔であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます