第20話 鈍感なお嬢様
「良かった、華澄は大丈夫そうだ」
歩は戦闘が終わりすぐに華澄のところへ向かい、応急処置をした。
「おい!大丈夫か!!」
「あぁ、良かった……」
警察が来て安心したのか、歩の意識はそこで途絶えた。
こうして
しかしこれはほんの始まりに過ぎなかったと、今後世界は知ることになる。
「我々は断固としてクリエイターだけの世界というものを否定します。なぜなら……」
テレビには有栖川家の当主が映っており、
人々の頭の片隅にあったクリエイターの独立運動がとうとう現実化してしまい、世間は大騒ぎである。
そんな中、歩と華澄は同じ病院の同じ部屋に入院していた。有栖川家の
「ねぇ、歩。あなた私が倒れてからどうやってあいつを倒したのよ」
「え、それは... 華澄と俺が戦ってる時点でもう大分疲れてたみたいだから……後は誰でも倒せたと思うよ、うん。華澄が相手の体力を削ってくれたおかげだよ! じゃないと、ワイヤーなんてCVAで倒せるわけないさ」
「ふーん。じゃあそういうことにしてあげるわ。でも、歩は何か色々隠してる気がするのよね〜。気のせいかしら?」
(これは、いつもの奴か! クソッ、なんて可愛さなんだ! 相変わらず
心の中では激しく動揺していたが、それを表にあまり出さず歩は返答した。
「ま、まぁクリエイターだから隠し事の一つや二つはあって当然だろ? アハハハハハ……」
「まぁいいわ。そこは
「え……」
真正面から真剣な顔つきで礼を言われ、思考する
それから数日が経過し、歩と華澄は無事に退院した。久しぶりに学校に行くと、クラスの人の視線が凄かった。
そんな中、雪時がすぐに歩のところに駆け寄ってきた。
「おい、 歩! 大丈夫なのか!? テロに巻き込まれて怪我したって聞いたが……」
「あぁ、まあ何とかね。有栖川家の人のおかげでいい病院に入れてもらったし」
「そうか、そりゃ良かった。そうえば、噂になってるんだがテロリストを撃退したって本当なのか?」
「えっ!?」
(まずい、何でそんな事になってるんだ? 警察にも有栖川家の人にもこの件は内密にって言われてるのに、なんでそんな核心をつくような噂が出てるんだよ!)
「いや、俺たちはただ偶然居合わせただけで何にもしてないよ。な、華澄!!」
自分だけではフォローできないと思い、すぐさま華澄に助けを求める。
「えぇ……私と歩は特に何もしてないし、何も知らないわ……」
華澄の顔からは簡単に動揺している事が見てとれた。
(このお嬢様、隠し事下手かッ!! 俺も苦手だけど、華澄はひどいなッ!!)
しかし周りの関心はもはやそこではなかった。
「あれ? 歩、お前有栖川さんの事下の名前で呼んでたっけ?」
(しまったぁああああああああ!! ま、まさかそっちにも爆弾があったとは!! こ、こいつはまずいぞ。なんとか言い訳しないと)
「聞き間違いだろ。ね、有栖川さん?」
「どうしたの歩? いきなり苗字で呼んだりして。下の名前で呼びあうことにしたじゃない」
(お嬢様あああああああああああッ!!!!??? 有栖川家の教育どうなってるのおおおおお!!? なんなの? 空気読めない子に育てるのが家訓なの? これは異次元すぎて対処できねぇよおおおお)
そして周囲には、
「やったな、歩。俺は応援するぜ!」
雪時は完全に勘違いして、そう言いながら歩むの肩に手を置いた。
すると、彩花が唐突に近づいてきた。
「じゃあ、あたしも歩って呼ぶね!」
「あ、
「あたしのことも彩花でいいよ、歩」
「え、はい。よろしくね彩花……」
(はぁこれは先が思いやられるな……)
こうして久しぶりの登校は大騒ぎのまま幕を閉じた。
テロ事件が起きた後だが、
「そろそろ、校内選抜戦始まるからちゃんと準備しとけよ〜」
そう言って教室を出て行く茜。校内選抜戦が迫っているので、教室は
「そうか、もう始まるのか」
「おい、大丈夫か? もう明日からだぞ?」
「怪我はまだ完治してないけど、予選のタイムアタックなら今の状態でも大丈夫... なはず...」
雪時と会話を交わす歩だが、少し懸念があった。
(やばいな、
第1章 Commencement 終。
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