第17話 覚悟
竹内はレイピアを構える。
「さぁ、仕切り直しといこうぜ」
(こいつ、この氷の中でも
相手は先に
「隙だらけよッ!!!」
「と思うだろ? そうでもないんだぜ?」
「!?!?」
生成されていた氷の剣が華澄めがけて射出された。
100本近い氷の剣が自分に目がけて飛んでくるのを
弧を描くように、空から大量の氷の剣が華澄めがけて降り注ぐ。その光景は
「数が多いわねッ!!!」
(死角から!? これは、避けれないッ!!!)
戦闘力が高いクリエイターは、VAを自分の意志でどこにどの程度リソースを割くかコントロールできる。今回はそれが完全に
華澄は直撃を避けようと身体を何とか
「ぐうううッ!!!」
クリエイターなので戦闘による痛みは慣れているが、それでも思わず声がでてしまうほどダメージを負った。
(
「歩、気をつけて! 生成された氷はどこからでも自由に
「みたいだねッ!! くッ!!」
歩は
何とかワイヤーで牽制しようとするが、その暇がないほどレイピアから繰り出される突きは素早かった。
「これでもまだ耐えるか……だが、
「くそ、まだ本気じゃないのかッ!!」
思わず不満の声を漏らす。歩はVAの使い過ぎで両目、両耳、鼻から出血していた。今はまだ少量だが、このままだと自分が
(でも、ここで
竹内は一旦距離を取り、再びレイピアを地面に刺した。レイピアの先端部分以外が氷の刺でコーティングされていく。
そして今度は氷の剣ではなく、氷の
一撃のダメージより、手数の多さを重視したと思った歩は
(この状態でVAをマルチ展開したくないんだが、止むを得ないッ!!)
「ここは物量で押させてもらうぜ」
氷で生成された大量の刺が同時に射出された。刺自体はそれほど大きくないが、その数は尋常ではない。まるで氷の雨でも降っているかのようだった。
「華澄気をつけろよ!!」
「分かってるわよ!!」
360度、全方位から氷が降り注ぐ。
歩は
自分を中心にダンスでも踊っているかのように回転しながら、硬化したワイヤーを展開する。ワイヤーに刺が当たり、反射する角度を計算しながら最小限の動きで射出された全ての刺を回避する。
「かはッ!!!」
(くそ、さっきから出血が激しすぎるッ!!!)
一方、華澄は何とかガードするも少しずつダメージを負っていた。
(数が多すぎて、
なんとか刺を
「華澄!! 大丈夫か!!」
「えぇ、なんとか……ね……」
全ての攻撃を防ぎきったと思った矢先、華澄はその場に倒れた。
「華澄ッ!!!!!」
駆け寄ろうとする歩だが、後ろには竹内が立っていた。
「殺しちゃいねぇよ。ただ相応のダメージは負ってもらったがな」
倒れた華澄の周りに血が溜まっていく。どうやら脇腹を連続で刺されたようだった。しかも、氷をコーティングされたレイピアによって。
傷口は少し凍っており、出血とその氷によって容赦なく華澄から体温を奪う。
致命傷ではないが、このまま放っておいてはどうなるか分からない。
「
いつもの歩ならこのような質問はしないが、いまは焦っているのかそう言ってしまった。しかし竹内はそれに応じて返答をする。
「今のは、
「
「まぁ化け物連中と違って、俺はこの
歩は基本データバンクに載っているCVAとVAをほぼ全て知っている。今上げられた名のVAはかなり希少なもので、歩は柄にもなく声を荒げた。
クリエイターの出せる移動スピードの限界を超えることの出来るVA。その速さは文字通り消える。
「さぁ後はお前だけだぜ、七条」
(華澄の状態を見るに、長引かせるのはまずい。ここは俺も覚悟してアレをだすしかないか。成功率はまだ低いが……ここでやらなきゃ俺も華澄も最悪死ぬ...)
歩は今までの中で一番張りつめた顔をする。しかし、その顔は何か覚悟を決めたようにも見えた。
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