第10話 枯原の枯いつさいを受容るる

「鷹」に入会してから三年間の私の成績は、正に順調そのものだった。そもそも藤田湘子には昔から不変の指導方針があった。それは特定の一名を、ある時期を象徴する綺羅星として取り上げ推讚して、古株の門下生たちを嫉妬させ発破を掛ける、というものであった。そうして過去に何人もの作者たちが一時眩しいばかりの脚光を浴び、やがて何事もなかったかのように姿を消していったのだが、名誉にも私がその「特定の一名」に選ばれたのだ。藤田湘子のやり方を知っている古くからの同人の中には、両足を突っ込んでしまうのは危険だ、片足は外に出しておけと私に忠告してくれる人もいた。しかし若くして藤田湘子の寵愛を受けてしまった私には、それらの言葉に耳を貸す精神的なゆとりはなかった。

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