言葉を見る

@tsuraritsurari

1話



僕は言葉が見える


昔から言葉には魂が宿るという


言葉が見えるっていうのはその

言葉が持つ魂か何かわからないが、そんな感じのものを感じ取ることができるということだ。


でも、僕も生まれた時から見えたわけじゃない

話は僕が小学生の頃まで遡る



家族3人で夏休み、毎年行っている

ハワイに行くため空港に向かおうと

車に乗っている時、左からトラックが

突っ込んできた


左に乗っていた父は即死だったと言う

母も僕が目を覚ました日の前の日に死んでしまったそうだ



僕は母に守られた

トラックが突っ込んできた時

咄嗟に母が僕を抱きしめてくれたことで

僕は生きていたのだろう


目を覚まし、話を聞いた僕は事故による頭痛の比にならないくらいの頭痛を感じ、また眠りについた


そして再び目を覚ましたときである

目の前にいた叔父が僕に

「良かった、目を覚ましたんだね?心配したよ。」と語りかけた瞬間

叔父の隣にもう1人、叔父が現れたのだ

それもとても心配そうな顔つきで僕の肩に手を置いているのである

「うわぁっ!」

と、僕が叫んだそのとき、もう1人のおじさんは姿を消した


するとおじさんが心配した様子で

「大丈夫、なにも怖くない。ここは病院だ。昨夜も一度、君は目を覚ましたんだけど覚えてないかい?」


と、僕に声をかけると

もう1人のおじさんがまたも現れ、

心配そうに僕の肩をゆするように手を動かしているのだが、

僕の肩は触られているというより、

なにかモワッとした熱のようなものを感じた


「ひっ!」

僕が声を出すと同時にまたももう1人のおじさんは姿を消した

幽霊だと思った、僕は突然怖くなった

しかし、その幽霊はどうにも自分を心配しているようなのだ

そのことを考えると、一瞬感じた恐怖はどこかへ行ってしまった



「まだ気が動転してるんだね、ゆっくり休みなさい、君の気が落ち着くまで、私か叔母さんがここにいるから」

その言葉とまたも現れたもう1人のおじさんが温和な笑みを浮かべて僕を撫でるようにしてくれたことで

どうしてか僕は安心し、また眠りについたのだった




僕が目を覚ますと目の前におじさんが居て

「気は落ち着いたかい?」

と、僕に語りかけると同時に

やはりもう1人のおじさんが現れ、僕を心配するような顔つきで手を握るようにしてくれた


このとき、もう僕はこのもう1人のおじさんは、怖いものではないと正確に理解し、安心すると同時に

「グーーーッ」

とお腹が鳴った

「ははは、そりゃ、お腹空いてるよね

ちょっと待っててね、今病院の人にお粥か何か作ってもらうから。それまでリンゴでも食べるかい?」

と、おじさんがいうとどこから出てきたのか、僕の目の前にリンゴが現れた

すごく美味しそうに見える、僕は手でそれを取ろうとしたが、取れなかった

このときには既にこれは、もう1人のおじさんと同じようなものなのかな?と

推測できる程に頭が働いていた

そして目の前にあるのに食べられないことで、無性にリンゴが食べたくなってきて

「たべる!」

と僕が返事をすると

おじさんはリンゴを剥いてくれた

今まで食べたリンゴのなかで1番美味しいと感じた


リンゴを2つペロリと平らげたが

まだお腹は空いている

そのとき

「コン!コン!」

とドアがノックされた


「お粥ができました。入ってもよろしいですか?」

と女の人の声がした

するとまだドアは開いてないのに

僕の前に美味しそうなお粥が現れたのだが、そのお粥が触れないことは

リンゴでわかっているため

ドアが開くのを待った

ドアが開き

看護師さんが持ってきたのは

先ほどみたお粥と器などが違ったが

とても美味しそうだった

「いただきます!」

というと同時にお粥にがっついた

あまりに早く食べるのでおじさんが

心配していたが、

これも、今まで食べたお粥の中で、

1番美味しいと感じたのだった



お粥を食べ終わりお腹いっぱいになったあと、おじさんが

「これからのことを話したいんだが、もう大丈夫かい?」

と聞いてきた

そのとき現れたもう1人のおじさんは

すごく真剣そうな顔つきだった









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